約 774,155 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/559.html
「ねぇ、キョン!アレ買ってよ!」 俺の隣に歩いてるハルヒは何かを見つけ、俺に見せた。 「はいはい…って、金、高っ!?」 ハルヒが見つけた物は、俺の金が無くなるぐらい高額であった。 「別に、値段はいいじゃないの…」 「そんな金はありません!返して来なさい!」 「ケチ!」 さて、皆さん、突然、唐突過ぎて分からない人いるだろうか。 今、俺はハルヒとデートしてるのである。不思議探しでもない、SOS団活動でもない… 正直証明のデートである。 「やれやれ…」 どうしてこうなったかと言うと、今から2日前に遡る。 某月某日の夏の放課後。 「キョン!話あるから残ってて!」 俺は帰ろうと思ってた時に、ハルヒから止められた。 何で俺が残るのだ、俺はお前に何をしたんだ。 「別に、あんたは何もやってないわ」 ハルヒは、椅子座りながら言った。 まだハルヒは何かを企んでるな。どうぜ、俺にコスプレを着させて宣伝するつもりだろう。 いやいや、それは無いな…コスプレするなら朝比奈さんしかいない。 だとすれば、俺に危険な事をやらかすんじゃないのかね? 「用が無ければ、帰るぞ?」 「待って、今から言うわ」 やはり、ロクな事言うに違いない…。 帰りたい、早く帰りたい。だけど、このまま帰るとハルヒに死刑されるわ、 ハルヒがまだ「メランコリー」になったら、古泉に叱られるに決まってる。 逃げる道は無いのか…と俺は、少し溜息した。 「どしたの、キョン?まぁ、いいわ…明後日、暇?」 明後日?明後日だと…うん、休日だな。別に予定が無い訳で、暇になるな。 しかし、何故…明後日なのだ?不思議探検をするのだろうか。 取りあえず、聞いてみた。 「あぁ、暇だが…明後日は、何があるんだ?」 と問うと、ハルヒは何やら、そわそわしてる様子だった。 何だ、ハルヒの様子がおかしいぞ…。 「あ、あのさ…えーと、その…デ、デ…」 …デ? やっぱり、おかしいぞ…今のハルヒは、いつものハルヒではなく…。 顔を真っ赤にして俯いてるハルヒである。 「デがどうした?ハッキリ言わないと分からんぞ」 「そ、そんなの分かってるわよ!だから…デ、デートよ!」 はい?今、何で言いましたか?ハルヒさん。 「だーかーらー、デートしよ!と言ってるんだってば!」 デ、デートだって!? デートとは、 1 日付。 2 男女が日時を定めて会うこと。「恋人と―する」 なるほど、これがデートって訳か…って、何で辞書を出すんだよ。 落ち着け、俺!これは、ハルヒの罠だ!そうさ、ハルヒの罠に決まってる。 「冗談だろ?」 と俺が言うと、ハルヒはこう言った。 「ホントよ!冗談だったら、そこまでは言わないわ!」 マジですか…。嘘だと言ってよ、ハルヒ! 「…と言う事で、明後日9時に公園で集合ね!遅れたら、奢りよ!いいわね!」 …と言う訳で、今に至る訳だ。 勿論、遅刻してしまい。奢る破目になった…。 「仕方ないでしょ!遅刻したあんたが悪い!」 おぃおぃ、「9時に集合」って言ったのは、どこのどいつだ。 頼むから、集合時間を正午してくれよ…。 今、ハルヒと一緒に色々と歩き回り楽しんでる所である。 ―ぐうぅ~… いかん、腹減った。 時計を見ると、もう正午に回っていた。 「キョン、腹空いたの?」 「あぁ、腹減った」 実は、朝食抜きで出かけたからだ。このままだとぶっ倒れそうだな。 「仕方ないわね、あ、あそこ食べようよ」 と、ハルヒは指差した。 俺はハルヒが指差した方へ見ると、シンプルな風景であるカフェだった。 「あ、ここ知ってる」 「ん?何か知ってるって?」 「今、女性の間で凄く人気あるカフェなの!」 「ほぅ…」 男としての俺は、そんなに人気なのか全く分からなかった。 取りあえず、食べ物とコーヒー頼んだ。 「そういえば、有希はどうしてるのかな?」 長門の事か…あいつなら、無感情で本を読んで過ごしてると思うぞ。 「そうなの?だったらいいけどさー」 そんな会話してる内に、頼まれた物がやって来た。 朝食食ってない俺にとっては、助かる。 「う~ん、うまいね!ここ」 「あぁ、ホントに上手いな」 なるほど、ベジタブル料理だから女性には人気なんだな。 ハルヒもそうだろうか。 ハルヒと楽しく食事を取ってた時に、誰かがやって来た。 「あれ?ハルにゃんとキョン君じゃないかぁ!」 「つ、鶴屋さん!」 おや、鶴屋さんじゃないですか、どうしたんです。 「いやぁ、今、友達と遊んでるにょろ!」 よく見ると、奥のテーブルに鶴屋さんの友達がいた。 「所で、ハルにゃんとキョン君はどうしてここにいるのかな!」 「そ、それは…その…そぅ!不思議探しよ!不思議探し!ね、キョン」 ん、何で俺に言うんだよ。 「そうなのかぃ?」 「えぇ、そうですよ」 「そうそう、あは、あははははは…」 と、笑い誤魔化すハルヒ。 そんな事したら、疑われてしまうだろうか、ハルヒよ。 「ふーん、そうしとくよっ!さ、デート頑張れよっ!」 鶴屋さんは元気良く、その場から去った。 「…あ、あれ?な、何で、デートって分かったのかな?」 …ハルヒ、自分で言った事をもう一度思い出してやろうか。 この後、俺の奢りで支払いをしたのである。 「そういや、この後、どこへ行くんだ?」 「ん、デパートへ行こ!あたし、ちょっと欲しい物あるから」 と言って、店から出て、デパートへ向かったのである。 デパートか…俺の金、まだあるんだろうな。 俺の愛しいサイフを覗いて見たか、あるか無いか微妙だった。 そんな事をしてる内に、目的のデパートに到着した。 ハルヒは欲しい物ってあったのだろうか。 まさか、UFOを呼び出す道具とかそんなんじゃないだろうな。 だが、俺の予想は外れた。 「キョン、見て!見て!」 ハルヒが俺に見せたのは…。 「服?」 よく見れば、ピンク色のワンピースである。 「これ、欲しかったんだよね!似合う?」 ハルヒよ、それ反則…マジ似合うよ。 「あぁ、物凄く似合うぜ」 「ありがと!値段は…」 俺も値段を見た。 うむ、安いな。 「じゃ、あたし買って来るね」 「待て、ハルヒ」 俺はハルヒを呼び止めた。 「え、何?」 ハルヒは驚いてた。 何故なら、ハルヒが持ってる服を奪って、レジの所へ行ったからである。 「ちょっと、キョン!あたしが買うからいいよ!」 「いいじゃないか、たまには俺からのプレゼントだと思ってくれよ」 俺は買った服を受け取り、ハルヒに渡した。 「え…でも、あんたの金は…」 そこまで心配するなよ、俺の奢りなんだからな。 「気にするな、さっき言ったとおりだが…俺からのプレゼントだと思って受け取ればいい」 「…うん」 うむ、照れてるハルヒは可愛いな。 それにしても、ハルヒが欲しかったのは、服だったのか…。 …早くワンピース姿見たいね。 そして、色々、楽しい事をした。 俺は、ハルヒと一緒に居るとなかなかいいかもなと思った。 いよいよ、デートの時間が終わりに近づいた。 「あー、楽しかったね!」 「そうだな」 俺達は、今、公園で休憩してる。 夕日が暮れ、公園の電灯が点いた。 俺はふと、ハルヒの横顔を見た。とても可愛くて美しい女に見えた。 「ん、何?」 ハルヒは、俺がハルヒを見てる事に気付いてた。 「あ、いや…」 ハルヒが可愛すぎて、こっちが恥ずかしくなった。 ヤベェ…理性が爆発しそうだ。 「怪しいわね、下心あるんじゃないの?」 ハルヒは、笑ってた。 俺は、必死に笑い誤魔化そうとした。 「ねぇ、キョン」 「何だ?」 「そろそろ、素直になったら?」 「え?」 一瞬、時が止まったように感じた。 「あたしも素直になるから…本当の事を言ってくれる?…あたしの事好き?」 「ハルヒ…」 よく見れば、ハルヒの肩が少し震えてる。 俺は、ハルヒを優しく抱き締めた。 今、思った。素直になろうとな。 「ハルヒ、俺は初めてお前にあった時は、綺麗だったし、軽く惚れたよ… SOS団、設立して本当に良かったと思ってる。お前がいると、俺は幸せなんだよ。 幸せだからこそ、俺は今ここにいるじゃないか!ハルヒ、お前の事が好きだよ。 例え、どんな事あろうと守るよ。」 言えた。俺の告白…ちゃんと言えた…。 俺は、ハルヒを見ると驚いた。 ハルヒは、 泣いてた。 「ハ、ハルヒ!」 「ゴメン、違うの!あたし、嬉しいよ…こんな事思ってるなんで、あたしも幸せだよ!」 ハルヒは、俺を強く抱き締めた。 「あたしも、あんたの事が好きよ!」 俺は、感動してしまい、少し泣いた。 ハルヒも物凄く泣いた。 俺は、このままでいい…このまましばらく抱き締めたいと思った。 「ねぇ、キョン…キスしてくれる?」 「あぁ…するよ」 俺の唇とハルヒの唇を重なり、キスした。 長いキスだった。 「お疲れ様、キョン!そして、これからも一緒に行こうね」 「あぁ、そうだな」 帰りは、手を繋いで歩いた。 ハルヒとしゃべりながら帰ると楽しいものだな。 完 おまけ 「ねぇねぇ、キョン!これ、どう?」 ハルヒは、ポニーテルにワンピース服の姿で現れた。 「似合うじゃないか、ちょっとカメラ撮っていいかな?」 と、言うと 「ダメv」 ハルヒは、朝比奈さんのお得意技でもある、一本の指を唇に当てて、ウィングした。 グラッと来たね。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5198.html
中国の故事だか何に由来するのかは知らないが、俺は光陰矢のごとしなる言葉がこの世にあることを知っている。 意味は、時間は矢のように早く過ぎるとかそんな感じだったように記憶している。 あいにく俺は古代日本語が苦手であり、ついでに古代中国に何があったのかも知らないものだから、光陰って何だ? とか訊くのはよしてくれ。 長門に訊けば由来から実体験ぐらいさせてもらえるのかもしれんが、今はやりたい気分ではないのでやめておく。そのうち気が向いたら辞書で調べるさ。 それはそうと、今は六月である。 去年の今頃というと、それはおそらく俺が白昼夢以上に夢っぽい空間からハルヒと一緒に生還した一週間後くらいであり、それと同時にまさしく悪夢だった中間試験が終了した頃だろうと思う。 それから我ながら大声で笑いたくなるような試験の結果が告知されるとともにハルヒによって草野球大会への出場が告知されたりして、一生のうちにも稀な忙しさを誇る感じの日々だったように記憶している。 そんでもって草野球大会が終了してからもいろいろ、つまり三年前のハルヒとかカマドウマとか孤島ミステリーツアーとかだな、あったんだが、ここでいちいち思い出に浸っていると時間がなくなっちまうので今詳しく話すのは控えておくとする。 というように、光陰矢のごとしなどという脳みその隅っこに埋まってよほどの衝撃がなければ出てきそうにない単語が都合よく出てきたのは、やはり俺主観の時間の流れの早さに由来するのではないかと最近疑いを持つようになっている。 日常、つまりハルヒが何も言い出さないときは時間というのはやたら遅くたらたら流れているように感じるのだが、ハルヒが一旦何かを言い出すと途端にスピードアップしたように感じる。そんでもって今の俺が、ああ時間の流れるのは早いなあとか思っているってことはつまりハルヒが何か言い出さないときのほうが少ないわけで、それは俺の小賢しい頭に巣くっている無数の非日常的思い出がしっかり示してくれているのさ。 さて話が逸れてしまった。 今は六月である。 佐々木とか橘京子とか未来人野郎――藤原とかいう苗字だったかな――とか、あと周防九曜が一気に出現した騒動でいろいろあった四月五月はやっと過ぎ去ったわけで、まだ俺の脳内からトラウマが消えないのはどうしたことだろうと誰かに愚痴をこぼしたいのだがそれはいいとする。そんなのが終了して嵐の後の静けさというか嵐の前の静けさというか、秩序のようなものがSOS団周辺に戻っていた。 ついでに紹介しておくと、四月に他の部活動がまっとうなやり方で新入生を勧誘している間に我がSOS団が実施した、ハルヒ作の某国立大学入学試験よりも難解かつ理不尽な入団試験に合格した新入生は一人としておらず、まあいてくれても困るので俺としてはほっとしたがな。長門も朝比奈さんも古泉も、ついでに俺とハルヒも普通らしい普段の精神状態に復帰し、長門は読書、朝比奈さんはメイド、古泉はボードゲームといったようにまるでどこかの昔話のごとく平和な感じに平凡で不変な状態を維持し続けている今日この頃である。 世界の物理法則を百八十度くらいねじ曲げてくれたハルヒもようやく静かになったか、と思っていた。適度に暴れる、俺に言わせれば一番安全な状態である。その暴れ方も以前に比べればマシなもので、映画撮影をカオスの極地に追い込んだり時間を逆戻りさせたりということはなく、ハルヒの持つスペシャルパワーを使わない暴れ方になっていた。古泉の言う「普通の女子高生」なるプロフィールがハルヒに定着するのも時間の問題かと思っていたのだが。 どっかの誰かがそれを許さなかったらしい。 そんな最中、起こってくれた。 * 「ねえキョン、そろそろ来る七夕に向けて準備をしないといけないと思わない?」 時は六月半ばのとある木曜日、中間テストが続々と返ってくる悪魔週間のまっただ中、俺には理解不能だがおそらく客観的に見れば古典という授業が終わった直後の休み時間だった。 解放感を味わうために座った状態で背伸びした俺の肩を、二年生になってまで飽きもせず俺の後ろの席を占領し続ける女が何の前兆もなく引っ張った。 やめてくれ。 お前のその強力のせいで脱臼でもしたら治療費はお前が出してくれよ。 「そんなのはあたしのせいじゃないわよ。あんたの肩がひ弱だからいけないの。それにほら、今だってバカみたいにぼーっとした顔してるじゃない。そんなだから身体に力が入らないのよ。しゃきっとしなさい。顔の筋肉に力を入れるの」 こんなひねくれの境地のようなことを本気で言う人間は俺の知り合いに一人しかおらず、また世界中を探してもいろんな意味で世界遺産以上の価値を誇る女であり、その名前を涼宮ハルヒといった。 そんなムチャクチャな。 「ムチャクチャじゃないわよ。あたしは状況を冷静に判断して物を言ってるんだからね。悔しかったらあたしが最初に言った言葉を二秒で反復しなさい。ぼーっとしてなければ解るはずよ。はいスタート」 …………。 「はい不合格」 俺の答えを待たずして不合格の印を押したハルヒは笑いながら怒るという芸当を披露している。 「仕方ないわね。もう一度まったく同じことを言ってあげるから、耳の穴かっぽじって今度は一語たりとも聞き逃さないようにしなさい」 ハルヒは不敵に笑いながら、 「来る七夕に向けて準備するわよ!」 と、そう宣言したのだった。 繰り返しなさい、とハルヒが言っている。最初に言ったやつとはずいぶん変わっているがこれはツッコんでやるべきなのだろうかとか思いながらも、反復しなければこの休み時間を無駄にしてしまいそうなので俺はハルヒが言ったとおりに繰り返した。 「合格。もっとしっかり聞いてなさいよ」 「ああ、できるだけ努力する」 「じゃあ本題だけど、あんた、自分が今言ったことの意味はしっかり理解できてるわよね?」 俺だって人並みの耳と脳は持ってるんだ。耳から情報を取り込んで脳で処理しなきゃ、それは聞いてないのと同じだぜ。俺の場合、古典の授業なんかがその典型的パターンだな。 「解ってるならいいわよ。あたしね、つくづく思ってたの。七夕とかクリスマスとかの大イベントって何で一日しかやらないのかしらって。前後一週間くらい七夕ウィークとかクリスマスウィークとかにするべきよ」 「それじゃありがたみが減るだろ」 「そんなんじゃもったいないわ。せっかく大きなイベントなんだから、それなりの日数は取るべきよね。七夕だってそろそろやってもいい頃よ」 自分勝手もここに極まったような言い分だが、まあそうなれば織り姫と彦星も空の上でさぞかしありがたがることだろうよ。だがキリストの誕生日はどうしようったって一日限りだぜ。キリストがそう何回も生まれ変わってたらそこらじゅう神様で溢れかえるに違いない。 「とにかく、あたしは個人的にでも七夕を長期間楽しむことにするわ。クリスマスツリーだって十二月の第二週には飾るんだから、笹だって六月の半ば頃には飾ってもいいはずよ。そうじゃないと不公平よ。許せないわ」 誰を許さないつもりなのか。いや、それはいい。ハルヒの言う個人的ってのに俺や長門や朝比奈さんが組み入れられてるだろうこともいいとしよう。 「それでお前、七夕には何が必要か知ってるんだろうな。えらそうなこと言って、そんなのも知らなかったらロクでもないぜ」 「知ってるに決まってるじゃないの。あたしはこういうイベント事に関してはね、あんたよりもずっと深く理解してるつもりよ。それに去年だって同じことやったし」 ああ、去年ね。確かにそんな記憶がある。あの時は朝比奈さんに連れられて三年前に行って、そこで中一のハルヒと会ったんだったな。犯罪まがいのことをした末に世界を大いに盛り上げるためのジョン・スミスをよろしくと叫んだ――のは別の時だったか。 回顧録に思考を飛ばす俺をよそに、ハルヒは自慢げに鼻を鳴らした。 「でもねえキョン、あたしだって去年より進歩してるのよ。去年は学校裏の私有地の竹林で笹を取ってきたんだけどね、今年は違うのよ。どこで取ってきたと思う?」 「さあな。私有地の竹林から公有地の竹林に変わったんじゃないのか?」 「違うわよ。今年は鶴屋さんのとこの山から笹をもらってきたの。もうすごかったわよ。あの山、笹から竹まで立派なやつがわんさか生えてるんだもん」 「まさかとは思うが、お前普通の竹を取ってきたんじゃないだろうな。七夕に使うのは笹だし、そうじゃなくても部室は狭いぜ」 「安心しなさい。しっかり部室に収まる程度で適度に立派なやつを選んで持ってきたから。あたしだってそんくらいは考えるわよ」 どっちにしろ鶴屋さんにお礼を述べておく必要があるだろう。あの方にとっては、自分ちの山の笹竹の一本や二本があるかないかなんてのは、俺の自宅にアリがいるかいないかぐらいのもんだろうが。 「じゃあキョン、放課後までに願い事考えとくのよ。善は急げだから」 その用例は少し間違っているのではないかと考える俺に向かってハルヒは「みくるちゃんと有希と古泉くんのところに行ってくる」と言い残して、韋駄天走りで教室を飛び出していった。 願い事ね。 確か十六年後と二十五年後に叶えてもらいたいやつを書かないといけなかったんだっけ。ベガとアルタイルまで光が届く年数だ、とか。ハルヒの考えそうなことだ。 俺は去年俗物を頼んだ覚えがあるが、はたして今年は何と書けばいいのだろうか。今すぐにと言われたら『ハルヒの暴走を止めろ』とか『周防九曜の類の連中とは金輪際顔をつきあわせたくない』とか願うんだろうが、未来の自分の願い事というハルヒ説を重んじるなら今さらそんな願いをしたところで無意味だからな。どうせ十六年後とか二十五年後の俺はその前の年と変わりばえしない日々を送ってるんだろうよ。 もっとも、十六年後や二十五年後にはハルヒやその他の連中は俺の近くにおらず、そんでもってハルヒが暴走していないと仮定しての話だが。 * 放課後はすぐにやって来た。 そういえば部室に向かう途中に鶴屋さんと出くわした。相変わらず快活な挨拶をしてくれて、俺も笹のお礼を述べておくと、 「いいよいいよっ。あの山のなら竹でも笹でもどんどん持ってっておくれっ。あたしはハルにゃんの思いつきをちっと齧らせてくれればいいからさっ」 とまた、こちらが恐縮したくなるような度量の大きさを見せつけてくれた。つくづく感心するお方だ。朝比奈さんと並んで先輩の人気度ランキングナンバーワンだな。 さて、SOS団アジトもとい文芸部室に足を踏み入れた俺を待っていたのは、夏バージョンのメイド服に衣替えした朝比奈みくるさんに長門有希の等身大人形のような読書姿、古泉一樹のハンサムスマイルだった。ハルヒは清掃当番なので俺は先に行って待っていろと指示されている。待ってるだけで短冊を書くのはダメらしい。竹なら部室の隅に準備されてるのに。 なるほど鶴屋家所有の山に生えているだけはあるような、青々と茂る笹の葉を満載したぶっとい笹竹である。このちっちゃい部室には場違いな感が否めないでもないが。 「キョンくん、こんにちは」 扉を開けた俺を一番に出迎えてくれたのは、俺の精神的栄養源かつ目の滋養になってくださっている朝比奈さんだった。相変わらず何も知らないガキに天使だよと紹介したらあっさり信じ込んでしまいそうなくらいに可愛らしい笑顔で、ああ俺も自然と笑顔になっちまいそうだ。 未来から来ているという付加効果なしでも充分SOS団に必要な存在だろう。今さらながら、彼女をスカウトしてきたハルヒの目は確かだったな。いろんな意味で。 「すぐにお茶を淹れますね」 そう言ってパタパタと急須に向かう朝比奈さんの微笑ましい姿を横目で見ながら俺はパイプ椅子に腰を降ろした。 しかし朝比奈さんには悪いですが、いくら夏バージョンとはいえそのメイド姿は暑そうですよ。去年みたいにナース服にしたらどうです。いや、俺の好みとしてはメイドのほうがいいんですけどね。 ただでさえ暑い六月半ばである。人の気も知らずにいつまでも停滞を続けやがる梅雨前線のせいで、この文芸部室は暑いにプラスしてじめじめしていて蒸し風呂状態である。ストーブが冬に来てくれたのは嬉しかったが、どうせならクーラーも欲しいな。オンボロ扇風機程度じゃあ、このだるい部室内空気を引っかき回してるだけだ。 俺は視線をずらし、奥のパイプ椅子にひっそりと鎮座している小柄な読書娘を見る。長門はいつものように完全に固体化しており、はたしてこいつよりも動作の少ない生物が地球上に存在するのか疑わしくなってくるね。 部室が暑いと言ってもこいつは別格である。そもそも暑いとかいう概念がないんじゃなかろうか。あるいは変温動物のように体温調節機能を獲得しているのかもしれん。どっちにしろチートだ。 「いや、もう夏ですねえ」 俺が鞄から取り出した下敷きをうちわにして扇いでいると、本当は暑いくせに暑そうな素振りを一切見せないハンサム男が話しかけてきた。 「まったく驚きです」 これ以上暑苦しくなりたくなかったので無視してもよかったのだが、とりあえず反応してやることにする。 「何にだ」 「四季の過ぎ去るのがこんなにも早い、ということにですよ。同じような話は春にもしたと思いますがね。この一年、細かく言うと涼宮さんに出会ってこの部活に入ってからですが、僕としては多忙を極めたような日々でした。裏方、『機関』のことに加えてSOS団の涼宮さんのことにも気を配らねばなりませんでしたから。たぶん僕の人生のうちでベストスリーにランクインするほどの忙しさだったでしょう。しかし、その割に何故こんなにも早く時間が過ぎ去ってしまうのか、それが不思議でならないんですよ。あなたはそう思いませんか?」 当然のようにオセロを持ち出してきて俺にコマを配布し始める古泉に、俺はまあなと答えた。 「ハルヒが何かやらかす度にこっちの時間も狂っちまうんだから、今ほど時の流れが早くなったり遅くなったりすることもないだろうよ。冬なんか総じてえらい目に遭ったが、そのくせ冬の時間の流れは一番早かった」 「それはなかなか面白い思考ですね。今ほど時の流れが遅くなったり早くなったりするときはない、ですか。それに冬という視点で見るのもなかなか面白いです」 いかん。どうも古泉のご機嫌を取るようなことを言っちまったらしい。俺は朝比奈さんが運んできたほうじ茶を啜りながらこいつの説明地獄からどうやって逃れようかと考えるが、たぶん無理だろうという結論に至ってげんなりした。 「僕はね、時々思うんですよ。春はあんなことがあった、夏はあんなことがあった、秋はあんなことがあった、冬はあんなことがあった、とね。まあ春というのは先日の佐々木さん方面の話ですが」 ああ解った。解ったからその話はもうしないでくれ。当分奴らとは顔を合わせたくないんだ。 「おっと、それは申し訳ありません。あなたに関して言えば彼らは迷惑以外の何者にもならないような人たちでしたからね。実際迷惑をこうむったと思いますが」 「まあな。だが、迷惑ならハルヒが俺をSOS団に引き込んだ瞬間から始まってるぜ。というかそれが一番の原因だろ。SOS団にいなけりゃ俺はまっとうな高校生生活を楽しんでただろうし、橘京子や九曜に迷惑をかけられることもなかった」 古泉は怪訝な顔になりながらもスマイルだけは崩さずに、 「SOS団にいたせいで、ということですか。……ではもう少しつっこんだ訊き方をしますが、あなたはSOS団に引き込まれたことを後悔していますか? 今すぐでも、この団体を去ってしまいたいのですか?」 だから、そんなことを面と向かって訊くな。何にもないときにおいそれと人に――特に古泉に――言いたいことではない。 俺の無言をどう取ったのか、古泉は自嘲気味に小さく笑い、 「すみません。話を元に戻すことにしましょう。あなたが相手だと話が逸れやすくてね。それで僕が言いたいのは、僕の頭の中では春や夏という季節ごとの分類でSOS団の出来事がまとめられているという点なんですよ。SOS団にまつわるさまざまな出来事を思い返す度に、僕の思考には四季が結びついているわけです。野球大会は夏、映画撮影は秋、ラグビーの試合観戦は冬といったふうにね。たとえば、訊きますが夏には何をしましたか? しっかり覚えているでしょうか」 「そりゃお前」 忘れようにもSOS団の活動で俺が死ぬときに忘れ去ってそうな事件なんか一つもあるわけがない。そんなヤツがいたら健忘症を疑ったほうがいいだろう。 夏には無限ループの夏休みをやって、あと野球大会とかカマドウマの一件もあったし、朝比奈さんに連れられて三年前にも行った。そしてお前がやらかした孤島のインチキ殺人事件だ。 「その通りです。ならば秋はどうでしょう?」 「秋は映画撮影に尽きる。コンピ研とネット対戦とかもしたが、まあ秋はハルヒも割と静かだったしな」 「では冬は?」 「……待て、何をしたいんだよお前は」 「そんなに大したことではありませんよ。ちょっとした実験です」 含み笑いのような笑いを浮かべる古泉に不気味さを覚えながらも、俺は冬の記憶を辿る。 冬は本当にいろいろあった。何が一番印象に残ってるかと言われればそれはもちろん長門のエラーだかで世界が変わっちまったことだが、それ以外にも雪山の山荘とか中河のヒトメボレ騒動とかいろいろあるぜ。 「なるほど。つまりあなたは僕が季節を言うだけでその季節にSOS団で何があったかを明確に思い出すことができるんですね。あなたの場合は全部が全部衝撃的だったということもあるわけですが、しかし朝比奈さんや長門さんに訊いても同じ答えが返ってくると思いますよ」 「どういうことだ」 「SOS団の活動は四季と深く結びついている。こういうことです」 古泉の嬉々とした声を聞きながら、俺はああとか思った。 そもそもハルヒが行事的イベントを好んでやり出すからとかいうのもあるんだろうが、それでもSOS団の活動には季節に関係していることが多い。夏には市民プールとか合宿とか夏らしいことを、秋には文化祭関連で一幕あったし、冬は雪山に行っている。知らないうちに季節が一回りしたことも驚きだが、俺の脳内記憶装置に季節ごとのフォルダができているのはそこらへんが関係してるのかもな。 だから何だって話だが。 「僕はそう考えると途方もない想いに駆られますね。このまま同じように高校二年、三年を過ごして卒業したとき、四つの季節フォルダに一年ごとのSOS団の活動録ができあがっているかと思うと、まだやり遂げてもないのに達成感が湧いてきます。朝比奈さんがこのまま行くと今年で卒業してしまわれるのが非常に残念ですが、とにかく今のベストの状態で終わりを迎えたいものです。もちろんそんなのはきれい事に過ぎませんけどね」 俺は古泉の言葉に妙な引っかかりを感じた。 「何だ、今はベストの状態なのか?」 古泉はオセロ盤にコマを置いて俺の白を一枚裏返し、それから自分の手のひらを裏返して、 「さあ。僕は『機関』の一端末でしかありませんから、上の実状がどうなってるのかははっきりとは解りかねますがね」 「お前、知っててわざと伏せてんだろ」 「どうでしょうかね。……まあ僕に言わせるのなら、涼宮さんの面だけで見たら悪くはない状態だと思いますよ。閉鎖空間の出現頻度は今のところかなり少なくなっています。《神人》ともご無沙汰で、いやこんなに会っていないとそろそろ会いたくもなりますよ」 そりゃ病気だ。早めに治療してもらった方がいい。ああ思いついた。閉鎖空間ノスタルジア症候群なんて病名はどうだろう。 「それはそのうち学会に発表することになったら考えさせてもらいますよ。今のところ発表する気はありませんが。それで、確かに涼宮さんの精神は落ち着いています。その面だけで見たらベストと言ってもいいくらいにね。それは我々超能力者にとっては非常にありがたいことなのですが、しかしです。いま問題視されるべき存在は涼宮さんだけではなくなってきているんですよ。あなたもお気づきでしょう。我々の敵と呼ぶべき存在」 けったいな話をしながらも、古泉はオセロのコマを裏返した。 敵と言うべき存在ね。俺の心当たりはなくもない。 そんなのは言うまでもなく周防九曜である。 他にも問題のある連中に持ち合わせはあるのだが、とりあえず誰かを敵視しろと言われたら俺はぶっちぎりでこいつを敵視するね。他の連中ならまだ会話程度は成立するが、九曜の場合はコミュニケーションが成り立たん。会話という意思伝達の概念がないってのがマジな真相さ。 佐々木の一件で現れた広域帯宇宙存在天蓋領域のインターフェース。それが九曜の正体である。 春以前にも雪山の山荘ではずいぶん派手な歓迎会をしてくれやがり、長門を発熱させるようなとんでもないバケモノだ。あんなヤツとは二度と関わりを持ちたくないと思った俺の心情も察して欲しい。 地球外生命の知り合いなら、長門と喜緑さん――と朝倉は微妙なところだが――だけで充分だ。 俺の話を黙って聞いていた古泉は曖昧な表情を作って、 「まあ、確かに周防九曜は敵視すべき存在でしょうね。しかし、です。悔しいことに彼女は僕の手に負える存在ではありませんよ。いいわけめいて聞こえるかもしれませんが、あまりに大きすぎる獲物に狙いを定めても失敗するだけなんです。長門さんには申し訳ありませんが、彼女のような強大な敵は長門さんに任せるまでです。もちろん助力はしますけど。しかし、僕が懸案しているのはその他の人物です」 俺は次なる敵にピントを合わせた。 「佐々木や橘京子や藤原とかいう未来人野郎か」 奴らもまた、出てこなくてもいいのに出てきた連中である。 橘京子は古泉の『機関』の敵対勢力で、藤原は朝比奈さんとは別種の未来人だっけ。 佐々木はともかくとして、橘京子や藤原のような連中に遠慮はいらん。リング外で一万回ぶっとばしてやりたいくらいだ。 「そうですね。彼ら二人に的が絞られます。立場上ということも関係していますが、そのうち僕が気にかけているのは橘京子のほうですよ。長門さんのような強力な存在があと二、三人こちら側について援護してくれれば気にかける必要もなくなるのですが、そんなことはなさそうなのでね。長門さんには周防九曜が、朝比奈さんにはあの未来人がいるのと同じように僕には橘京子がいて、それぞれ自分だけで手一杯なんですよ。この間の一件で一応のことそれぞれ和解していますが、事実上敵対は続いています。証拠に、あちらはまだ佐々木さんを中心として形だけ結束していますからね」 ああアレか。Aに敵対する勢力がどうのとかいうやつだ。あっちが形だけ結束してるのに比べりゃSOS団がはるかにマシなものだってのは、たぶん客観的に見てもそうなんだろうね。涼宮ハルヒという巨大権力の下、宇宙人と未来人と超能力者が団結してるんだからな。俺が何なのかはいまいち解らんが、そんなことはもうどうでもいい。 「つーことは、まだ裏で激戦を繰り広げてたりするのか? 敵対する組織同士で」 「いえ、少なくとも僕のところについて言うならばそんなことはありませんね。今のところ橘京子のほうからの動きは見られませんから。いたって静かですがお互いを観察し合う状態、つまり春以前の冷戦状態に逆戻りです。それだけに何かきっかけがなければお互い攻撃することはないと思いますが、ただし油断はできませんよ」 じゃあ話を変えるが、藤原はどうなんだ。橘京子が黙ってたってあいつがいつまでも黙ってるとは思えないぜ。そして、しかもそうなると朝比奈さんが負けそうな気がしてならないんだよな。不思議なことに。 「そんなことはありません、と僕は思ってるんですけどね。それぞれ実力に見合った相手と敵対しているわけですから。彼も性格がああでも所詮は朝比奈さんと同じ未来人です。そして、未来人がどんなふうかは朝比奈さんを見れば解るでしょう?」 古泉は、パイプ椅子に座って編み物をしている朝比奈さんに目をやった。 可愛さは学園内ナンバーワンだが、こうしている限りではとても未来人とは思えん。いや、素性を隠してるならそれが普通か。 「彼女は何も知らされていない、というのは前にお話しましたね。過去の人間に未来がどうなっているかを予測させないためです。そこの理屈はどの未来にとっても同じはずですから、これはあの未来人にも言えることだと思いますよ。彼もまた未来からはほとんど何も知らされていないのでしょう。ついでに、こちらで何か動きがなければ未来からは干渉してこないところもね。そして今、橘京子の一派はすぐに動き出す様子もないし、天蓋領域は長門さんたちに監視されているため大きな動きがある可能性は少ない。そして未来人も動けないために、涼宮さんの周囲は不気味なほど静まり返っているわけです」 「なるほどな」 俺は息を吐いた。 「とりあえず、今すぐにこれ以上何かが起こるってことはないと思っていいのか?」 「その通りです」 古泉はいつもの微笑を二割り増しにして答えた。 嵐は過ぎ去ったのだ。 危険極まりない周防九曜やその集団は、今や長門のところが見張ってくれている。 橘京子の一派は強行派ではなく、一件を終えて静まっている。 藤原とかいう未来人野郎は事態を動かすだけの力を持っていない。 「このまま静かになってくれるといいんですがね」 古泉がぽろっとこぼした。 「涼宮さんの精神が落ち着くのに始まって、そこからすべての組織が収まってくれれば、それほどいいことはありませんよ」 俺も同感である。 一番最初に大問題だったのはそもそもハルヒなんだ。 四年前に始まり、その変態パワーを使って周囲をさんざん巻き込んでくれたが、高校二年生になった今ハルヒはようやく静かになりつつある。 前みたいな憂鬱と暴走の大きな谷と山の繰り返しがだんだん小さくなって、もう少し経てば平地になってくれるかもしれない。そうなったとしたら俺はきっと妙な寂しさを覚えずにはいられないだろうが、それでも世界が収まってくれるのならそれでいい。 だったら、と思うのだ。 ハルヒが事態のすべてを引き起こした原因だったのだとしたら、その原因が静まればそれを取り巻く周りも静かになってはくれないのか。覆水盆に返らずっていうアレか? そんなことはない。事実そうなりつつあるのだ。二年生の春にあった佐々木の一件を最後にして、ここんとこは事件らしい事件は何も起こってない。だったら、このまま何も起こらずにすべてが収まらないのか――。 「ただしね」 古泉は言って、おもむろに一枚のオセロのコマを手でつまんだ。 「ひっそり静かなのと大荒れなのは表裏一体なんですよ。たとえば、このコマは今は白を表に出しています。しかし、これがちょっとしたことでもあれば裏返るかもしれない。そうすれば、今まであなたの味方だった白は突如として姿を変えて黒になるわけです。しかし、もしかしてちょっとしたことが何もなければ永遠に裏返らないのかもしれません。一方で、すぐに何かがあったらすぐに裏返るのかもしれません。……いえ、我ながらこれは喩えが悪かったですね。とにかく、いつ大荒れになるのかを予測できないのが僕には無念でならないのですが――」 「ごっめーん!」 古泉の言葉はいきなり部室のドアを押し開けた人物の派手な謝罪によってかき消された。古泉は俺に向かってお得意の肩をすくめるポーズを取ると、持っていたコマをパチンと盤に置き、白を一枚裏返してから今までそんな真面目な話などしていなかったかのように挨拶をした。 「おや涼宮さん、どうもこんにちは」
https://w.atwiki.jp/nicogammon/pages/5.html
活動内容 ニコ生バックギャモンクラブの活動を紹介します。 1.ニコニコ生放送上で、自由に対戦・雑談! 【ニコニコミュニティ】ニコ生バックギャモン本部 こちらのニコ生コミュニティにて、管理人のラバーを始め何人かの配信者が 不定期にバックギャモン関係の生放送をしています。(誰でも放送可能です!) 気が向いた人が視聴して、コメントを利用し、自由にバックギャモンに関する雑談をしたり、 対戦をしたり、感想戦をしたり。ゆるーくやってます。 2.気軽に参加できるネット大会の開催! 月に1回を目安に、「ニコ生大会」と呼ばれる、ネット上の大会を開催しています。 大会と言っても、参加費も賞品も何もない、お遊びの大会。だからこそ、初心者の方も大歓迎。 日本人とみんなで競い合って、いつもよりちょっと緊張感のある対戦をお楽しみあれ。 ちゃんと結果は表彰します。また、開催する時は1週間前までに表彰ページ コミュニティ上のお知らせで告知します。 最も重要な大会は、半年に一度、6月と12月に開催されるタイトル戦・「魔王戦」です! 3.イベント放送の実施! ニコ生上でのバックギャモン活動は、日本バックギャモン協会にも認知され始めています。 それもあって、時々日本トップクラスの選手をskypeでお呼びして、勉強になる放送を行ったり 東京で開催される大会の予選会を行ったり・・・等々の、イベント放送を行うことがあります。 その他、世界選手権をみんなで観戦しよう!という放送も行いました。 活動の歴史 これまで行ってきた活動のまとめです。 2011/7/3 バックギャモン入門動画「バックギャモンをやろう!」の投稿 2012/1/8 ニコニコ生放送における「バックギャモン放送」を開始 2012/2/5 [イベント放送]大会の棋譜鑑賞放送を実施 2012/2/19 [ニコ生大会]初のニコ生大会「第1回ニコ生ギャモン杯」開催 2012/3/20 [ニコ生大会]第2回ニコ生ギャモン杯開催 2012/4/15 [ニコ生大会][イベント放送]王位戦(東京で行われる大会)中級クラスのニコ生予選会の実施 2012/5/11 [イベント放送]ミニ大会にみんなで参加しよう放送をはじめて実施 2012/5/20 [ニコ生大会]第1回ニコ生ノービスカップ開催 2012/5/27 [ニコ生大会]第3回ニコ生ギャモン杯開催 2012/6/23 [ニコ生大会][イベント放送]半年に一度のニコ生タイトル戦と称して、「魔王戦」開催。 解説者としてTJさん出演、出場者としてONOさん出演、初代魔王はONOさん(まとめ動画) 2012/8/3 [ニコ生大会]第4回ニコ生ギャモン杯開催 2012/8/25 [イベント放送]プロ対決、Michy vs Mochy 観戦放送(放送終了後、お二人がskypeで登場) 2012/9/5 [イベント放送]ハーフギャモン体験放送実施 2012/9/8 [ニコ生大会]第1回インターナショナルカップ開催、羅衣夜さんskypeで出演 2012/9/20 [イベント放送]ラバーvsリスナー軍団 25ptマッチ企画をはじめて実施 2012/9/23 [ニコ生大会]第5回ニコ生ギャモン杯の実施 2012/10/7 [イベント放送]バックギャモンフェスティバル(東京で行われる大会)の会場から試合を生中継 2012/10/7 バックギャモンフェスティバル開催中に、「ニコ生オフ会」開催。参加者9名。 2012/10/19 [イベント放送]バックギャモンフェスティバル 振り返り放送の実施 2012/10/27 [ニコ生大会]第6回ニコ生ギャモン杯の開催 2012/11/18 [ニコ生大会]第7回ニコ生ギャモン杯の開催 2012/12/7,8 [ニコ生大会]第二期魔王戦の予選の開催 2013/1/19 [ニコ生大会]第二期魔王戦の実施、うききさんが二代目魔王に(まとめ動画) 2013/2/1,8 [ニコ生大会]第1回ニコ生チャンピオンズカップ 準決勝の開催。主が出場した試合は空き王手が放送 2013/2/17 [ニコ生大会]第8回ニコ生ギャモン杯の開催、解説者として中村慶行さんskype出演 2013/3/12 [イベント放送]中村慶行さん出演、ミニレクチャーを開催(録画動画) 2013/3/30 [ニコ生大会]第9回ニコ生ギャモン杯の開催 2013/3/31 [ニコ生大会]第1回ニコ生チャンピオンズカップ 決勝の開催。主が出場したためFuyukiさんが放送 2013/4/9 [ニコ生大会]むよくさん・kaoru6さんが豪華賞品を提供して頂く大会「むよく杯」の実施決定 2013/4/12 [イベント放送]フリーソフト・GNUbgを使ってみよう放送の実施 2013/4/13 [ニコ生大会][イベント放送]昨年に引き続き、王位戦中級クラスのニコ生予選会の開催 2013/4/20 [イベント放送]超スピードギャモンの実施 2013/4/29 [ニコ生大会]第11回ニコ生ギャモン杯の実施(以後11か月ほど途絶える。) 2013/4/29 [イベント放送]王位戦におけるバックギャモン検定の無料受験権を賭けたクイズ大会の開催 2013/5/11 [イベント放送]王位戦振り返り放送の実施 2013/6/14 新バックギャモン入門動画「バックギャモン入門講座」投稿 2013/6/22 [ニコ生大会]「むよく杯」の決勝トーナメント実施、上位者にむよくさん、kaoru6さん提供の豪華賞品。 2013/6/29,30 [ニコ生大会]第三期魔王戦の予選を開催 2013/7/6 [ニコ生大会]第三期魔王戦 挑戦者決定戦を実施。解説者として中村慶行さん出演 2013/7/13,14 [ニコ生大会]第三期魔王戦五番勝負を実施。三代目魔王はFuyukiさん。(まとめ動画) 2013/9/26 [イベント放送]バックギャモンフェス告知放送part1(渡辺裕也さんのお話) 2013/10/5 [ニコ生大会][イベント放送]バックギャモンフェス告知放送part2 (バックギャモン検定の無料検定権を賭けたクイズ大会 中級戦予選) 2013/10/13 バックギャモンフェスティバル開催中に、今年も「ニコ生オフ会」開催。参加者18名。 2013/10/19 [イベント放送]バックギャモンフェスティバル振り返り放送。参加者7人に凸して頂く。 2013/11/19 [イベント放送]中村慶行さん出演、2度目のミニレクチャーを開催(録画動画) 2013/11/19 コミュニティにて、管理人・ラバー以外の生主も自由にバックギャモン放送ができる形に転換 2013/12/15 [イベント放送]Fuyukiさんのコミュニティにて、「ニコ生バックギャモン学会」開催。 発表者はぶーじゃむさん、うききさん、Fuyukiさん、ラバー。 2014/1/12,13 [ニコ生大会]第四期魔王戦の予選を開催 2014/1/20 [ニコ生大会]第四期魔王戦の挑戦者決定戦を開催。挑戦者はだるまさんに決定。解説者としてぐにゅさん出演 2014/2/2 [ニコ生大会]第四期魔王戦五番勝負、Fuyukiさんが魔王位防衛。解説者ぐにゅさん、ぶーじゃむさん出演。 2014/2/8 [イベント放送]イスタンブール特集。イスタンブールオープンに参加したNishikenさん、横瀬さんのお話を聞く。 2014/2/9 [ニコ生大会]久しぶりに初心者・初級者限定の大会「第3回ニコ生ノービスカップ」を実施。 2014/2/11-22 管理人の趣味により、オリンピック(主にショートトラック)観戦放送のコミュニティへと変貌する。 ヴィクトール・アンの三冠達成や、男子スノボハーフパイプの日本人選手銀&銅を見届ける。 2014/2/15 バックギャモンファン必須アイテム、フリーソフト・Gnu Backgammonの初歩的使い方動画をup。 2014/3/2 [ニコ生大会]約1年ぶりとなる通常大会の復活。「第12回ニコ生ギャモン杯」開催。 今後も月ごとに開催する方針を決めるとともに、このwikiの大会結果ページや自己紹介ページを整備。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5951.html
涼宮ハルヒの異界Ⅲ いったいこれは何なんだ!? 俺は今、信じられないものを目撃している。 むろん、自称が取れる証拠を律儀に俺に見せてくれた宇宙人、未来人、超能力者がたむろしている文芸部室自体も信じられるものではないが、眼前の光景はそれに輪をかけて信じられないものだった。 立つ続けに発生する《神人》。 それを発生するたびに、『魔法』で撃退している蒼葉さん。 どうやら《神人》たちは蒼葉さんを相手にするにはあまりに力不足らしい。 と言うか、蒼葉さんが強過ぎる。これを見ていると古泉の超能力自体も相当弱いものなのだろうか、などと勘違いしてしまいそうなほどだ。 にしても…… 「アストラルブレード!」 今度は両手で握ったロッドの先端から青白い刃が生まれ、それを携えた蒼葉さんが《神人》たちの間を時代劇の立ち舞いよろしく切り倒していく! ううむ……三体があっという間に真っ二つにされて倒れいくなんて…… 「ね、キョン! すごいと思わない! さっきはあんまり見てらんなかったけど、改めて見せられると爽快な気分ね!」 ハルヒが満面の笑顔で蒼葉さんの奮闘ぶりを眺めている。 「さっき? 俺が気を失っている間のことか?」 「そうよ」 ここでハルヒは蒼葉さんから俺に視線を移し、しかし得意満面の笑みで、 「あんた、頭からだくだく血を流してたし、顔色も悪かったし、そっちの方が心配だったわ。んで、あんまり頭を下に向けていると血どころか脳味噌が出てきそうだったんで少し頭をあげてあんたを膝枕してあげてたの。その所為でさっきは蒼葉さんをよく見ることができなかったんだから」 ええっと……俺はそれは謝ればいいのか? いや違うだろ? ここは感謝すべきところだよな? と言うか膝枕? むう。性格はともかくツラとスタイルが良く、肌も滑らかなハルヒの膝枕をまったく覚えていないとは。 どことなく不覚だ。それにしても四年前の七夕の朝比奈さんの時もそうだったが俺は膝枕されているときに記憶がないのはなぜだろう? 誰かの陰謀なのか? って、ちょっと待て!? 俺はそんなに深手だったのか!? 「そりゃそうよ。あ、でも安心して。蒼葉さんが完璧に治してくれたから。もう傷口どころか痛みだってないでしょ」 今一度頭をさすってみたが確かに異常を感じられない。 「……その割には俺の制服もお前のスカートも汚れていないようだが……」 まさか蒼葉さんは服を汚れる前の状態に戻せるのか? 「いや、さすがにそれはできないって言われた。だからあたしが一生懸命タオルで拭き取ったの。血でベトベトでちょっと気持ち悪かったし。ま、今はここが暗いんで分かり辛いだけよ。明るいところならあたしの服もあんたの服にも結構血痕が付いていると思うわ」 そうか。これはハルヒに多大な迷惑をかけたってことだな。素直に謝っておこう。 「当然よね! 今度、奢ってもらうから!」 それはいつもだろ。 「何言ってんの。いつものやつはみんなじゃない。今度はあたしだけに奢りなさい、って言ってんの」 「そうかい」 よくよく考えたら俺はハルヒの盾になって負傷したわけだからチャラじゃないのか、などと思ったりもしたのだがまあいいさ。 「じゃあ、そろそろ行くわよ。創造主を見つけないと蒼葉さんに怒られるもんね」 「だな」 言って、俺とハルヒが踵を返したちょうどその時、 再び、世界に静寂が訪れる。 どうやら蒼葉さんが今、この場に出現した《神人》どもは片づけてしまったようである。 が―― はあ……はあ…… ――!! 「蒼葉さん!?」 俺は思わず振り向いた。 い、今……呼吸が乱れていなかったか……? 表情に焦燥感を浮かべながら視線を移すと、 はあ……はあ……はあ…… 蒼葉さんが肩で息をしている。 後ろを向けているんでその表情は知る由もないが、おそらく疲労が蓄積しつつあるのだろう。足元には顔から滴り落ちているであろう汗がとどめなく滴を地面に跳ねさせている。 無理もない。 次から次へと発生しまくる《神人》をたった一人で撃退しているのだ。 これで疲労が来ないのだとすれば人間じゃない。 再び地響きが巻き起こり、 「今度は……三匹か……」 絞り出すように呟きながら、再び蒼葉さんが舞い上がる! 「オーロラサドンフリージング!」 ロッドを振りかざすと瞬時に《神人》三体が白い彫刻となった! おそらくは瞬間冷凍の魔法なんだろうぜ。 それにしてもあの《神人》を三匹まとめて凍らせるなんてとんでもない魔法だ。 急激に凍らされた《神人》が乾いた澄んだ音を立てて砕け散る。 どこか幻想的で思わず見入ってしまうほどの美しいダイヤモンドダスト的光景ではあったが、蒼葉さんが着地して片膝を付いた瞬間にそんな気持ちは吹き飛んだ。 「蒼葉さん!」 ハルヒが叫んで俺も一緒に駆け寄る。 「ごめん……あたしたち……何の役にも立てなくて……」 珍しくハルヒが悪びれた謝意の言葉を切羽詰まった表情でかけているわけだが俺も同感だ。 まったくもって俺は何をやっている? あたふたしているか呑気に実況をやっているか、だけじゃないか。 「私に謝る暇があるなら……早くこの世界の創造主を探しに行きなさい……あんたたちが見つけるまで私が何度でもあいつらを打ち倒してやるわよ……」 「でも……」 ハルヒの切ない悲痛の声の逆説も分かるってもんだ。 こんな状態の蒼葉さん一人を残して俺たちが動ける訳がない。 だいいち創造主は今ここにいるんだ。探しに行くまでもないってやつだ。 しかしだな。 それを蒼葉さんに伝えていいものなのかどうか俺には判断できん。 蒼葉さんは、話し合いで解決できないときは創造主を抹消することも辞さない、とまで言ったんだ。 それは場合によってはハルヒを殺す、と宣言したのと同じであり、そんな重大なことを俺に判断しろって方が無理だ。 さらにどれだけの時間が経過したのだろう。 俺とハルヒは後ろ髪引かれる思いで再度、新館と旧館に向かった。ハルヒは悲壮感を漂わせて創造主を探していただろうけど、俺は通称・旧館の部室棟一角に位置する文芸部室でもう一度、長門とやり取りした。 答えは同じだったがな。 ――この世界から涼宮ハルヒを消失させることが唯一無二の解決方法―― くそ…… 俺もまた、心を苛立たせながら再び新館と旧館の間に広がる中庭でハルヒと合流した。 いったいどれだけ同じことを繰り返したのだろうか。 ハルヒは何度も何度も旧館と新館の間を往復して、俺は旧館担当になったときにこれまた何度も何度も長門とやり取りした。 ――穏便にすませる方法はないものか? ハルヒを消失させずに―― ――涼宮ハルヒに『力』のことを告げ、止めさせるしかない。しかしそれは正しいことかどうか判断しかねる―― そりゃそうだ。 今、ここでハルヒにハルヒの力のことを教えてやるのは簡単だが、それがどんな結果を招くか分からないんだぜ。 いくら長門だって躊躇うってもんだ。 どうすりゃいい? 結局、最初の疑問に立ち戻るしか俺はできなかったのである。 俺たちの新館旧館往復の間も《神人》どもはランダムに発生していた。 いや、最初の七匹から次の二匹を除けば間を置かず、ひっきりなしと言っても過言ではないだろう。 それほどまでにハルヒはこの世界を誕生させたいのだろうか。けど、ハルヒがこの世界の創造を止めさせたいという気持ちも本当なんだろうぜ。 一見、ハルヒの中に矛盾があるようだがそうじゃないんだな。 ハルヒの新世界誕生を望むのは本心だ。それも長門のお墨付きで。 だが、この世界の創造主がハルヒ自身だってことに気づいていないんだから責任の所在が別になっているってことだ。 つまり、この世界の創造主はハルヒの中ではハルヒじゃなく別の存在ってことだ。ハルヒがハルヒの力のことを知らないんだから仕方ないことだ。 居もしない別の創造主をハルヒは追い求めているんだ……これじゃハルヒにだって非がないことになっちまう。 ハルヒは創造主探しを諦めたわけではないのだが、どうしてもこの場から離れたくないようだ。当然だな。俺だってそうだ。 握りこぶしに力を込めて全身を震わせる俺の眼前では、 「蒼葉さん! もういい! これ以上戦ったら蒼葉さんが死んじゃう!」 ハルヒが泣きながら、無理矢理立ち上がろうとした蒼葉さんを後ろから抱き締めていた。 いや押さえつけているのだろう。 そりゃそうだよな。 蒼葉さんは魔法を開放するとき以外はもう、まともに立っていられなくなっているんだから。 「もういいわよ……蒼葉さんの世界の人たちだってきっと分かってくれるって……たとえ世界が滅びたって蒼葉さんの所為にしないって……」 とどめなく流れる涙で蒼葉さんの背を濡らすハルヒの言葉は偽りならざる心だろう。 俺もそう思う。 蒼葉さんはよくやった。これ以上は絶対に蒼葉さんの命に関わるんだ。そっちの世界の人たちだって許してくれるさ。 体力や気力に限界があるように超能力にだって限界があるんだろうぜ。 現に古泉は初めて俺を閉鎖空間に招いた時に、《神人》を打ち倒すのは結構疲労すると言っていた。 当然、蒼葉さんにだって限界が近づいて来ているってことは明白だ。誰が見たってそう思うさ。 「……で、私に……みんなを見捨てて生き延びろ、とでも言う気……?」 が、蒼葉さんの息絶え絶えで発したセリフは明らかに非難の色が混じっていた。 「そ、それは……」 ハルヒが虚をつかれて言葉に詰まる。 「冗談じゃないわよ……私一人……助かっていい訳ないじゃない……それに……ここに来た時からこのことは覚悟していたわ……世界が崩壊するなら私だって世界と供に滅びるべき……私の命が尽きる前に世界が滅びることは許さない…… 本当にみんなが……私がよくやった……って言ってくれるのは私も天国にいないといけないじゃない……じゃないと本当に力及ばず力尽きて……にならないし……」 「覚悟だって……? 自分の命を捨てる覚悟ですか……?」 茫然と問いかけたのは俺だ。 「そうよ……私だって世界のみんなと一緒に居たいんだから……親友……弟子……同僚のみんな……見捨てられる訳がないじゃない…… 私のために世界がある訳じゃないんだから……世界があって私がいるんだから……」 ――!! 「ある人に……とっては面白くない世界なのかもしれない……でも、また別の人にとってはそれは面白い世界なのかもしれない……世界を楽しいと思う人も……いれば世界に怒りを感じる人もいる……嬉しいと感じる……人、悲しいと感じる人だっている……人一人一人にドラマがあって……それは誰にも否定できないことなんだから……それが世界……一人一人が集まって……初めて形成される空間……だから私は世界を守るために戦う……だって私も世界の一部だから……」 この言葉は、正直言って俺の心を激しく揺さぶった。 が、そんな感慨に浸る暇もなく―― ――もう出てくるな! 焦燥感溢れる表情で俺が心の中で絶叫する。 青白い巨人どもがまた、今度は十体ほど一斉に姿を現したのである―― さらに時間は経過する。 この世界の時間の概念がどんなものかは知らん。しかし、あの十体一斉出現の後、巨人どもは十体単位くらいで発生するようになったんだ。もっともそれでも蒼葉さんは全て打ち倒してきたけどな。 けど、その代償はあまりに大き過ぎる…… 蒼葉さんはもう突っ伏して全身が痙攣するように息を荒げているんだ。 ハルヒも蒼葉さんにかける言葉が見つからず、絶句して顔面蒼白になってその身を震わせている。口元を押さえ、その目から後から後から涙が溢れさせているんだ。 そして――事ここに至って俺は自分に嫌悪を感じることをようやく思いついた。いや悟ったという方が正しいかもしれん。 くそ……俺はどうしてこんなことに気がつかなかった…… よく考えたらハルヒが自分の能力を知ったからってどうだというんだ? それに俺はこの世界からハルヒと供に戻る方法を知っているんだ。この世界から元の世界に戻ってもハルヒがこの世界から消失するってことと同意語なんじゃないか。 怖いとか気恥ずかしいとか言ってる場合じゃないんじゃないか? それを躊躇して結果、全然無関係の世界を一つ、滅ぼそうとしていることの方が大問題じゃないのか? ハルヒに唐変朴な力が備わったのは俺たちの世界の所為であって、蒼葉さんが住む世界に何一つ非はない。だったら俺たちの世界がハルヒに対して責任を取るべきじゃないのか? もちろん俺も含めてだ。 「蒼葉さん、もういい……」 俺は意を決して切り出した。 瞬間―― !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 「今度は二十匹!?」 ハルヒが絶望の叫びをあげる! と同時にうずくまっていた蒼葉さんが残っている全ての力を振り絞るかのように立ち上がった! はあ……はあ…… 肩で息をする声ですらもうほとんど聞こえなくなってきた。 当然だ。一人で相当な数のあの巨人どもを屠ってきたんだからな。はっきり言って、こんな蒼葉さんの様子を見せられては俺はあいつらに『神』なんて冠を付けたいと思わん。 まるで悪魔の所業だ。 「……ご……めん……みんな……もう私が……」 ――っ! 俺とハルヒが息をのむ。 今、蒼葉さんが言った『みんな』という言葉は俺たちを指していないことをお互い理解できたからだ。 つまりそれは…… しかし、それでも蒼葉さんは右手に猛回転しながらまばゆい光を放つ魔宝石のロッドを構え、左手は別の魔法の光を携えて、 「この……二十匹はこれで……打ち倒せる……良かった……この魔法……あの子に注入しておいてもらって本当に良かった……でもこれ以上は……たぶん……」 「やめろ! 蒼葉さん!」 が、俺の叫びは蒼葉さんには届かなかった。 もう……耳も聞こえていないのかもしれない…… 「これが……私の最後の……魔法……けど……これが最後なら……みんな許してくれるよね……だって……この魔法は……」 蒼葉さんを中心に強烈な、眩い光を放射させている炎の気流が巻き起こる! いや、気流というより竜巻だ! 「実はね……私……この術に名前……付けてたんだ……今度会ったら感想聞かせてよ……結構考えたんだから……」 蒼葉さんの表情に笑みが浮かぶ。しかしその瞳にすでに色はない。 駄目だ! 蒼葉さんやめてくれ! 「グレイトフルサンライズフェニックス!」 野獣の雄たけびのような轟音でこの空間全てを震わせる眩いばかりに光り輝く巨大な――そう、不死鳥と言っても過言ではないだろう。 光の不死鳥の羽ばたきが二十匹の青白い巨人を一気になぎ払っていった。 再びこの閉鎖空間に静寂が訪れる。 と、同時に崩れ落ちる小柄な人影。 「蒼葉さん!」 ハルヒが駆け寄り、彼女を抱きあげる。 が、彼女の意識はすでになかった。顔色を失い、まぶたは閉じられ、頭髪は艶やかだったシアン色が真っ白に変貌している。 「どうして……どうしてこんなことに……」 ハルヒの瞳から涙がこぼれ落ちている。 くそ……これは俺の所為だ……俺はどうして真実を言うのを躊躇った…… 「キョン! 次にあの巨人たちが出てくる前に創造主を探し出すわよ! でないと蒼葉さんたちの世界が滅んでしまうんだから!」 俺に涙目のまま決意を固めた鋭い眼光を飛ばすハルヒ。 ああ、俺も同意見だ。 もっとも別に探し出す必要はないんだがな。 今なら言える。もう隠し立てしてはならんのだ。 「ハルヒ、蒼葉さんの様子はどうだ?」 「大丈夫。心音も聞こえるし呼吸もしてる。でもたぶん長く持たないわよ……心音も呼吸もだんだん細くなってきちゃってる……」 「この世界じゃ碌な治療も出来んからな。これは早く蒼葉さんを元の世界に戻してやろうぜ」 「うん。そのためにはこの世界の創造主をとっ捕まえるしかないもんね! とっ捕まえて世界創造を絶対に止めさせてやる!」 「いや探す必要はない」 「え?」 戸惑いの表情を見せるハルヒに俺はしゃがみこんで目線を合わせてやる。 「この世界の創造主ならもう俺の目の前にいる――」 ハルヒが戸惑いの視線を向けてくるがもう構わない。 俺は静かに、まるで子守唄を聞かせる母親のような優しい口調で言った。 「ハルヒ――お前がこの世界の創造主なんだ――」 当然、ハルヒは絶句した。 しかしそれは少しだけの沈黙を呼び、 「何バカな冗談言ってんのよ! 今はそんな場合じゃないでしょ!」 当然のように抗議してくるハルヒ。 しかし、俺のハルヒを見つめる、労わるようではあるが深刻で真剣な眼差しを崩さないまま、 「嘘でも冗談でもない。ハルヒ、この世界を創造したのはお前だ」 と告げてやる。 「あのなハルヒ。お前は四年前の七月七日に東中の校庭でけったいな絵文字を描いたよな?」 「それがどうしたのよ。みんな知っている話だわ。そんな話よりも今は」 「違う。これは重要な話だ」 「む……」 俺の強気な言葉にハルヒが言葉を失くす。 ハルヒが黙ったところで俺はさらに続けた。 「その時、校庭に忍び込んだのはお前ひとりじゃなかったはずだ。そこには女の子をおぶった男がいて、お前はそいつと一緒に絵文字を描いた。それは織姫と彦星にあてたメッセージだ。その意味は『私はここにいる』だろ?」 ――!! ハルヒの目が愕然と見開いた。 「ど、どうしてキョンがそれを知ってるのよ!? 誰から聞いたの? いえ、あたしはあの時のことを誰にも言ってない。あたし以外に知っているのは――まさか!」 「そうだ――知っているのはお前と一緒に絵文字を描いた奴、ジョン・スミスしかいない――」 再び、今度は世界自体が絶句して時間が止まった気がした。 「キョン……あんたがあの……ジョン・スミスだっての……? だってあれは四年前のことよ……」 ハルヒの絞り出すような声が再び時間を動かし始める。 「お前はさっき言ったが今は冗談なんか言っている場合じゃない。俺の言葉に嘘がないことをお前に分からせたかった」 「じゃ、じゃあ、どうやってキョンがあの四年前に!?」 「女の子をおぶった男が、と言ったはずだ。あの日あの時間に俺を連れて行ってくれたのはその背におぶっていた女の子だ」 「誰なのよ!」 「朝比奈さんだ」 俺の即答にハルヒは再び絶句した。いや協調反転したかもしれん。しかし構わん。 俺はさらに続けた。 「そして、お前が俺に教えなかったあの絵文字の意味、それを教えてくれたのは宇宙人だ。そう、お前の発案した絵文字は正に、宇宙的言語だったんだよ」 言葉を失くしたまま、ハルヒの視線が再び俺を捉えてきた。 もっともその瞳は、それは誰?と切羽詰まった色を携えて問いかけてきていた。 「長門が教えてくれた――長門は宇宙人に創られた存在だった。だからお前の絵文字が読めたんだ」 「嘘……」 「嘘じゃない。言ったはずだ。俺もこんな状況で冗談なんて言うつもりはないと。つまりそういうことだったんだ」 俺はハルヒの肩を力強く握った。 「去年の入学式の日、クラスの自己紹介でお前が言った『宇宙人、未来人、異世界人、超能力者』の内、宇宙人と未来人はもう傍にいたんだ。お前が知らないだけで、お前のほしいものはすぐそこにあったんだよ。そして今、異世界人の超能力者にも出会えた」 ハルヒの驚嘆から来た愕然とした表情はまだ崩れない。 「お前が望んだ異世界人で超能力者の蒼葉さんを助けるために、いや、蒼葉さんと蒼葉さんの生きる世界を救うためには俺とお前がこの世界から元の世界に戻ればいいんだ。それだけでこの世界の創造主のお前が消失することにもなるんだ。そして、これでこの世界は消滅する。それはお前も俺も知っていることだ。あの去年の5月の時にな」 「ちょ、ちょっと待ってよ! じゃあ何? あれは夢じゃなかったってこと? ううん、仮にそれを信じるとして、そもそもあたしたちはどうやって戻れたの――って、はっ!」 俺はハルヒの問いの答えることなく、ハルヒのどこか思いつめた表情をズームアップさせながら俺は瞳を伏せた。 そして――あの日と同じように俺はハルヒと―― 涼宮ハルヒの異界Ⅳ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/355.html
コンコン ど、どうぞー 何時もどおり部室にノックで確認をとって入る俺。 ヒュー紳士的ー、しかし今朝比奈さんの声、どこか上擦っていたような? 「うぃーすってみんなどうした?」 何時もと同じ面子だが、何時もとは様子が違う。 特にハルヒ以外のメンバー 「どうしたんだ?みんな?」 「いえ、別に何もありませんよ。」 と言った古泉の顔が笑いながら少し引きつっているように見える。 長門は相変わらず本を読んでるが席が窓側の近くから、廊下側の近くに移動されている。 朝比奈さんもここなしか、いや明らかに廊下側の近くの席に座っている。 そして皆の正反対の位置でハルヒがニヤニやしながらパソコンに向かっていた。 しかし朝比奈さんならまだしも、長門や古泉が観察対象から自ら離れるなど、なかなかないことだ、どんな近寄りがたい事をしてるんだ? 俺はハルヒが何をしているのか気になり、ハルヒ近ず。 何やら何かBGM的な音楽と女の声がパソコンから聞こえてくる。 オイMASAKA!? 俺は素早くハルヒの後ろに回りこむと、そこにはゲームの画面があった。 『えへへへ、キョンくーん。』 メッセージウインドウにはそう書いてあった。 さらに足元にゲームのパッケージが落ちていた、なになに? 東鳩2?意味わからん、だがパッケージのあるシールでこれがどういうものかが確定した。 さあ深呼吸だ★ 「エロゲーかぁぁぁぁ!!」 「そうよ。」 「うお!びっくりした突然振り向くな…。」 「突然叫んだヤツの台詞じゃないわよそれ。」 いやお前に問題がってそんなことはどうでも良い。 「でどこから仕入れてきた、こんなもん。」 「コンピ研ロッカー室から」「許可は?」 その時隣の部屋から。 『ああーマイユートピアはいずこに!!!?』 『お気を確に部長!』 『オレのこのみんが…オレのまーりゃんが…』 『諦めるな!まだ探して無いところがあるはずだ!』『エヘヘへもう生きてる意味すらわからない…』 『部長ー!部長ー!』 ………ご愁傷さまだが学校に持ってきてまでやるお前らにも問題あるぞ? そしてこいつにも大問題があるぞ、俺柄みでな! 「つーか俺の名前でプレイするなぁぁ畜生がぁ!!」 「だって、誰かに見つかった時にあんたのせいに出来るしー。」 SATUGAIしてー。 そんな沸き立つ感情を内に秘め、なんとかこの場を納める事に専念した。 「なあハルヒそれやるんならみんな帰していいだろ?俺は残るからさ。用事があるんだってさ。」 そういうとハルヒが皆の方を向く。 待っていましたと全員が逃れたくて、必死に首を縦にふる。 それを見たハルヒは、 「じゃあ良いわよ、今日は用事がある人はかいさ「「「おつかれさまでした!!」」」 「ハヤ」 ものすげー速かった。 おいおいこいつは世界を狙えますよ? 「さてハルヒ、部室に二人きりだな?」 ちょっとご機嫌に言ってやると 「そうね?じゃあどうするぅ?」 やけに挑発的だ。 「決まってるだろそんなの…。」 だんだんとハルヒの陰と俺の陰が一つに重なっていく。 「エロゲーじゃー!エロゲー祭りじゃー!!」 「うほほーい!この展開有り得ないけど胸が土器☆土器☆するぜぇ、なあハルヒ!」 俺たちは一つの画面に身を寄せてエロゲーを楽しんでいる、いつもはすれちがっていた二人が一つになれた。 俺らはこの一体感とエロゲーを満喫している、青春最高! 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3228.html
それは突然の事だった。授業が終わり、部室でハルヒが宣言したのだ。 「キョン、セックスしよ。」 今部室では幸い二人っきりだ。OKOK、落ち着け俺!今日は四月一日でもないよな。 「おい、お前いきなり何を言っているんだ?洒落にならんぞ。まったく俺だって健全な高校生なんだからな」 ハルヒは顔を俯いたまま床下を見ている。今なら説得出来そうだな、よし! 「もしかしたら、俺が本気でお前の事を犯すかもしれんぞ。さっきの言葉を本気にして…それで妊娠してお前の将来がめちゃめちゃになったらどうする?」 ハルヒは小さな言葉で呟いた。 「あたし…キョンとなら……い、いよ」 ん?小さく何を言っているのさっぱり分からん。こんなしおらしいハルヒを見るのは久しぶりだな。 だが・俺は少しハルヒに意地悪したくなったのだが、さてどうする?やっぱりこれしかないか 「おい、ハルヒよ。俺としたいのなら言うことを聞け!」 意外なことにハルヒはコクっと頭を動かし怯えた子猫の様にこちらを見る。 「とりあえずスカートを捲れ。」 ハルヒは俺の言う通りスカートを捲り上げる。驚いたね、いつもならこのエロキョーンと叫びながら殴り付けるのに もしやこれは今までの仕打ちを返すチャンスかもしれんな。それともどっきりカメラかも… だがハルヒはスカートを捲り上げたままこちらを凝視している。多分次の命令を待っているのか? 「次はブラウスとスカートを脱げ。机の上でM字開脚するんだ」 これは思った以上にとんでもない。既にハルヒは下着姿でそれもM字で股を開いている。パンツに少し染みがあるがもしかして興奮しているのか? あの唯我独尊の団長様が…見ているのも体の毒だ、触ってみたいのが健全な高校生なんだよハルヒくん 「ハルヒ、俺が今からお前の体触るからな。その時は声を出すなよ?出したら止めるからな」 「うん…分かったよキョン…我慢するね」 俺は、人差し指をハルヒの肩から文字を書くように滑らす。気が付いたのだが、なぞっているとあいつはビックと体を震わせている。 以外に敏感なんだなハルヒよ。本当なら大事な所等を攻めたいが少し焦らしてやる。その分楽しませてもらえるからな 耳に息を吹き掛けたり、甘咬みをしてみる。いつも朝比奈さんにやっている事だからな…お前も受けてみろよ 「う…っ…く…うぁ…」 強情に耐えているな。左手で股の隙間を擦ってみると息の上がりが激しくなっている。まだ秘部には到達していないのに、この調子で触ったら一体どうなるのか見当もつかない。 「ハルヒよ、今から耐えた御褒美をやるから声を上げてもいいぞ」 俺は直接ブラの隙間に手を突っ込んだ ハルヒのそれは朝比奈さんより若干劣るものの、掌に合わせたようにちょうどいい大きさだ。 少し進んだところで、指に突起が触れた。その瞬間、ハルヒは腰を跳ねた。こいつは本当に感度がいい。 「ちょっ、ちょっとまっ‥あぁっ!」 ハルヒのそれはみるみる肥大した。俺はそこを激しく責め立てる。 悶えているハルヒ。俺は顎に手を添えて強引に唇を奪う。 ちゅぱ…んん…じゅる唾液が交じり合う。お互いの舌を絡み合えをしながら歯茎等を攻める。 余っている右手をショーツの中に入れる。反応がまた変わってきた。指先で触れると、陰毛からクリトリスまですっかりベタベタしていた。 「ちゅぱ…きょきょん…もっとあたしを…ふぁぁぁ」 段々態勢がきつくなってハルヒを引き剥がそうとしたらあいつは泣きそうな顔をしてこっちを見ている。 やばい…ハルヒに初めて萌えてしまった。ここは口には出さないことにする。 「ハルヒ…これを見ろ。俺もお前で興奮している。だから、分かるよな?」 俺はズボンとパンツを降ろし外に出たジョン(息子俺命名)はビクッビクッとハルヒの方向に向いている 「キョンのおっきい…ふふふ」 いやらしい口から放たれるその言葉は俺にとって理性を壊すのに十分な威力だ。 「ハルヒ、俺のコレを静ませなければいけない。」 俺はハルヒの手をとり握らせる。初めて異性に触られる快感、細い指で上下に擦る。 「すごい、また大きくなったねキョン…」 くう…気持ちいい、いつの間にか立場が逆転していた。袋を口に含み尿道に絡めてくる細い指 思わず射精感が込み上げてくる。それを見透かしてハルヒは激しく擦り上げていく、カリが大きくなる。 「で、出る!ハルヒ離せ、顔にかかるぞ」 言った瞬間ハルヒは俺のジョンにしゃぶりついてきた。 ドピュッドピュッと俺はあいつに口内射精をしてしまった。普通なら離すのにあいつは離さず。 精液をおいしそうに飲み込む。ドロドロしていててこずっていたが、嬉しそうに100万ドルの夜景並の笑顔を振りまいていた。 嬉しそうなハルヒの笑顔…ふと思い出す。あいつは俺とのセックスが目的ではなかったのか? 実は俺のジョンも再充電している。これもハルヒが望んでいる事だろう。こうなったら話は早い 「ハルヒ…また、大きくなったのだが?責任とってくれるよな?」 「え?」 何驚いているんだよ。お前が望んだからこうなっているんじゃないか、まさかここまでしていて拒否はないだろう。 兜虫だって目の前にある蜂蜜等無視できないさ 「俺はハルヒが欲しい。一生大事にするから、抱かせてくれ」 そう言うとハルヒはニヤニヤしながら俺の顔を見つめながら話し掛ける 「ふふ、やっとあんた素直になったわね。いつまで待たせる気だったの?あたしはこうでもしないとあんたの本音が聞けなかったからね」 げっマジかよ。ハルヒにしてやられたみたいだな、しかし悔しくはない寧ろ良かったと思う。 「まあいいわキョンの好きにしなさい、初めてだから優しくするのよ?団長命令なんだからね」 ハルヒを再び抱き寄せいつもなら絶対言わない言葉をかける。 「ハルヒ…愛しているぞ…この世界で一番」 「グスッ…キョン…世界じゃなくて宇宙で一番と言いなさい。でも、ありがと…」 お互いの気持ちが重なっていく、心も肉体も。胸を揉みながら口付けを行なう。 ふと思ったことがある。それは、さっきハルヒにジョンを舐めてもらったからなお礼をしなければならん。 「お前のアソコ舐めていいか? 」 「汚いから舐めなくてもいいわよ。でもどうしてもと言うなら…あたしはいいわ」 俺は押し倒し股を開かせ初めて生で見る女性器。エロ本で見るよりも興奮した。 「まじまじ見ないでよ…恥ずかしいし、キョンは初めて見るの?もしかして佐々木さんと…」 「佐々木とは何でもない。俺はエロ本でしかないから安心しろ」 肉色はピンクに近いな。しかし昨日までハルヒとこんな関係になるとは思わなかったな。 陰芯に舌を突き出しスジを舐め回す 拡げながら舐め回すとハルヒの顔を見ながら反応楽しむ。 「あ、あん…そ、そこよキョン…うん…」 クリトリスの皮を剥き先端にピンポイント攻撃!俺は女の潮吹きを初めて食らう事になる。 「ああぁぁぁぁぁぁーっっ!いくぅぅぅーっっっ!!キョーン!!」 クンニに集中していたから避けられずに顔面に液体がおもいっきりかかってしまった。 「うわーちょっと待て!」 「ちょっとキョン大丈夫?ぷぷぷっあはははーゴメンね!あんたの顔最高」 かけた本人のくせに、まったく困ったものだ…笑った仕返しに顔を舐めてもらうか? いや止めておくか…逆なら恐ろしいことになるからな…やれやれ 「キョン?もしかして怒った?本当にゴメンね。だってすごく気持ち良かったの…」 「俺は別に怒ってないぜ。だだ少しショックだっただけだ。」 「キョン…あたし気持ち良かったの初めてだったから、許してくれるかな?それにまだアレも残っているし…」 ああそうだったぜもう少しで萎えそうだったが、どうやら俺の息子は親孝行らしい 再びキスをねだるハルヒのリクエストに答えしばらくすると俺の目を見つめ合図をする。もういいって事だな。 再び俺はハルヒを抱き寄せて正上位の体型にもっていく ハルヒの遥(陰部俺命名)を開き俺のジョンを挿入していく ハルヒの中は予想以上きつく暖かいぜ。言うならかずのこ天井ってやつかな?俺の息子への吸い付きが半端じゃない。 「キョン…が中に…くう…また大きくなるよう…」 入れたばかりなのに、射精感がまた込み上げてきそうだ。しかしハルヒは処女のはずだが… まさか既に非処女なのか?中学時代、色々な男と付き合っていたのは知っている… だがハルヒは初めてと言ったから間違いはないはずだ、俺は信じることにした 俺は少しづつストロークを上げる。そのたびにハルヒは喘ぐ。 「あん…あん…キョ…気持ちいい…もっと乱暴にしてもだ、大丈夫よ」 そうかい、ならスピードアップする。でもすぐに出そうなので体位を変える事にしたほうがいいな 「ハルヒよすまんが四つ馬になってくれ。後ろからやってみたい、いいだろう?」 ハルヒは顔を真っ赤にして少し睨みを入れて話し掛ける 「あ、あんた正気なの?後ろから?本当に初めてなの?この変態エロキョン」 後ろから突きまくる。俺は小さな葛藤と戦っていた。ハルヒを乱暴して支配したい心。もう一つは愛しくハルヒを大事にして優しくする心だ 性交しているのに冷静になれるのはなんでだろうね。まったく俺は少し変態かもな… 気付くのが遅いかもな!もう少し奥まで突いてみた。 ズズッ…クチュ…いやらしい音が部室にこだまする 「あん…キョーン!あんたのアレ…うん…子宮に当たるわ…凄い何これ」 やばい、あまりにもハルヒの中の締め付けが丁度ジョンとの相性が抜群なのだ 「キ、キョン…次はあたしがキョンを上から見たいの、だから…いいかな?」 今度は騎上位かよ!心の中で突っ込みをいれる。 「分かったよ、お前の好きにしろ。」 ハルヒは嬉しそうに俺の上に乗りジョンを掴んで再挿入を行なう。 「あん、あん、これも気持ちいいよ。やっぱりキョンとあたしは最高のパートナーね!」 俺はハルヒの胸を揉み解す。なんか俺が犯されている感じだなこれは、しかし騎上位というのは精子を出す時難しいな。いったん退けなければいけないからな そう思いながら下を確認すると結合部から出血があった。これは純潔を破った証拠なんだな… ハルヒの動きが激しさを増す。これ以上は勘弁してくれ 「おい!やばいって出そうだ。聞いているのか?」 「うん…あん…キョンキョンキョーン何で…何か来そう」 まったく聞いちゃいない!このままでは俺はやばい事になる。射精感が限界に近い 「頼むよ…ハルヒ出そうなんだ。妊娠したくないだろ!おーい」 「ちょっと待ってよキョン!もう少しもう少しで何かが来そうなの」 「な、何?キョン中でプクッとしているわ!先端が大きくなっているじゃないの!」 更にジョンを締め上げていく。ダメだ…俺は耐え切れず。そして… くう…俺はメルトダウンしてしまった。やはり騎上位はやるのではなかった。 中で精子がハルヒに吸い取られる。 「ちょっとキョン!中に何を出したの!」 「スペルマ、ザーメン、子種、精子と言われるものだが」 まあ受精すれば子供が出来る。男と女の交わりで作る。なんて神秘的なんだろな 「妊娠しちゃうじゃないの!馬鹿キョン!あんたわかってんの?」 お前が話を聞かず騎上位で退かないのが悪い!と言いたいが…言ったら閉鎖空間どころじゃないからな 万が一子供が出来たら俺が責任とる。俺だって男だからな、その位頼りにしてくれよ。 「ハルヒ、もしもだ。出来たら一緒に育てよう。俺達の子供だ、ここで赤ちゃんを流す事は考えていないぞ。親の都合で命を奪うなんて俺はしたくない」 俺って格好いいな!ハルヒは涙を流している。 「グスッ…キョン。ありがと…出来たらあたし生むから」 俺はハルヒを抱き締めキスをする。やっぱりこいつを一生大事にしないとな…そして 突然ドアが開いた。 ガラッ 「遅れてしゅみましぇーん」 「………」 部室内が異様な雰囲気となっている。朝比奈さんは目をあさっての方向に向けながら 「あ、あ、あのう、これはお楽しみのところすみましぇーん」 朝比奈さんは真っ赤なになりながらパタパタしている「本当に知らなかったのです。ま、まさか涼宮さんとキョン君が禁止事項をしているなんて」 さっきから朝比奈さんが俺のジョンを熱い眼差しで観察されていますが… あーダメですよ。いくら手で目を隠そうとも隙間から見ているのがバレバレです 「ひゃっ!……す、すいません…ごゆっくりぃ;;」 いったい朝比奈さんは何をしに来たのか…まあ団活だが… とりあえずハルヒさん服着たほうがいいんじゃないか? 「キョンもう一度する?どうせ一回も二回も同じなんだしさ」 もう一度やるのか?確かに朝比奈さんに見られて興奮しジョンも起きたままだから…つーか我ながら凄いな 「じゃあ一応鍵かけておくか?誰にも邪魔されないようにな。」 俺は扉に鍵を閉めハルヒと再び向かい合う 「一応騎上位は止めような。出すとき不便だし…結婚したら何回でもやってやるからさ」 「うん!約束よ。キョン、忘れたらどんな手を使っても思い出させるからね」 どびっきりの笑顔で俺を迎える未来の俺の妻 もう既に俺の将来も決まっていたのかね。退屈するより遥かにマシだ だからこそハルヒが必要なんだろうな。重なり合いながら今後の事を考えていた。 一応完
https://w.atwiki.jp/haruhi-2ch/pages/109.html
涼宮ハルヒの溜息Ⅲ(2009年放送版・時系列第22話) スタッフ 脚本:ジョー伊藤 絵コンテ:石原立也 演出:石原立也 作画監督:池田和美 原作収録巻 第2巻:長編『涼宮ハルヒの溜息』より第3章のP111から第4章のP165まで。計55ページ分をアニメ化。 DVD収録巻 涼宮ハルヒの憂鬱5.857142(新シリーズ第7巻) 紹介 今回は憂鬱からの時系列順では朝比奈みくるの同級生、鶴屋さんの2回目の登場回となる。旧作から考えると放送順9話の『サムデイ イン ザ レイン』以来の登場となる。2009年放送順 時系列では、この後のエピソードには準レギュラーとして、頻繁に登場するようになる。 作画監督は、16話のエンドレスエイトの作画監督を担当した池田和美。演出は同じく15話を担当した団長補佐(総監督)の石原立也。なお今回の脚本担当は『ミステリックサイン』の脚本も担当したジョー伊藤という人物だが正体はこの作品のプロデューサー伊藤敦Pである。 神主役の最上嗣生は、賢プロダクション所属の声優。 原作未読で『朝比奈ミクルの冒険 Episode00』を視聴した人にとって、今回は長門が何故みくるを襲ったのか?という疑問に対する答えが示される回である。 次回予告 TV版 なし 放送版とDVD版との違い 0 41 ステージ奥の茶色い四角いものの位置が変わっている。他、樹木・雑草などの生え方が大幅に修正 (※ SOS団名曲アルバムの背景画像では、なぜか修正前の同カットが使われている) 6 11 石段に階段追加 15 53 地面に影追加 17 12 18 11 みくるの黒タイツ復活 19 28 電話ボックスの脇にポスト追加 あと、樹木の色合いと石段に細かい修正あり パロディ・小ネタ 「ズームイン」→『ズームインスーパー(またはズームイン朝)』 土曜午後のバスの中・光陽園駅前で、バニー姿のミクルが黒タイツを穿いていない(生足)カットがある。DVDで修正済み。 谷口「詐欺だ!」キョン「ザキ食らって死ね」→『ドラゴンクエストシリーズ』の即死呪文「ザキ」。 一方、原作119Pにあった珍しいドラクエネタ「単独で出現したホイミスライムより~」はアニメ版ではカット。 SOS団のキャスト位置が前話よりさらに1マスずれている。特にハルヒとキョンの位置関係は大きくずれている。2人の関係がギクシャクし始めていることへの暗示か? キャスト・スタッフ(詳細) キャスト キャスト 1段目 涼宮ハルヒ:平野綾 キョン:杉田智和 朝比奈みくる:後藤邑子 古泉一樹:小野大輔 長門有希:茅原実里 2段目 鶴屋さん:松岡由貴 谷口:白石稔 国木田:松元恵 神主:最上嗣生 スタッフ 脚本:ジョー伊藤 絵コンテ:石原立也 演出:石原立也 作画監督:池田和美 動画検査:村山健治 美術設定:田村せいき 美術監督補佐:細川直生 色彩設計補佐:永安真由美 色指定検査:永安真由美 特殊効果:三浦理奈 制作マネージャー:横田圭佑 原画 牧田昌也 坂本一也 河浪栄作 引山佳代 柏木平 米田光良 牟田亮平 高橋真梨子 内海紘子 佐藤達也 野々上翠 山村卓也 動画 黒田久美 藤田奈緒子 根来清夏 渡辺雄一 西岡麻衣子 宇田淳一 Studio Blue 仕上げ 宮田佳奈 宇野静香 永安真由美 江田美穂子 宿谷葉子 胡恵美 Studio blue 背景 アニメ工房婆娑羅板倉佐賀子 松本吉勝 池玄珠 椿浩幸 撮影 中上竜太 田中淑子 山本倫 高尾一也 梅津哲郎 浜田奈津美 植田弘貴 友藤慎也 柴田裕司 冨板紀宏 船本孝平 (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 2009年 サンテレビ:2009年8月27日24時40分-25時10分 テレ玉:2009年8月27日25時00分-25時30分 新潟テレビ21:2009年8月27日25時45分-26時15分 東京MXテレビ:2009年8月28日26時30分-27時00分 tvk:2009年8月28日27時15分-27時45分 TVQ九州放送:2009年8月30日26時40分-27時10分 テレビ和歌山:2009年8月30日25時10分-25時40分 テレビ北海道:2009年8月31日25時00分-25時30分 KBS京都:2009年9月1日25時00分-25時30分 広島テレビ放送:2009年9月1日25時29分-25時59分 チバテレビ:2009年9月1日26時00分-26時30分 奈良テレビ:2009年9月1日26時00分-26時30分 仙台放送:2009年9月1日26時08分-26時38分 メ~テレ:2009年9月1日27時55分-28時25分 Youtube:2009年9月2日22時00分-2009年9月3日21時59分(24時間限定配信) RKK熊本放送:2010年3月21日25時50分-26時20分 DVDチャプター 使用サントラ 一覧 新アニメ 1期時系列 1期放映順 DVD 原作小説(巻) コミック収録巻 アニメサブタイトル #01 第01話 第ニ話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 I #02 第02話 第三話 第01巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 II #03 第03話 第五話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 III #04 第04話 第十話 第02巻 憂鬱(1) 第01巻 涼宮ハルヒの憂鬱 IV #05 第05話 第十三話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 V #06 第06話 第十四話 第03巻 憂鬱(1) 第02巻 涼宮ハルヒの憂鬱 VI #07 第07話 第四話 第04巻 退屈(3) 第03巻 涼宮ハルヒの退屈 #08 - - 新第01巻 退屈(3) 第03巻 笹の葉ラプソディ #09 第08話 第七話 第04巻 退屈(3) 第04巻 ミステリックサイン #10 第09話 第六話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(前編) #11 第10話 第八話 第05巻 退屈(3) 第04巻 孤島症候群(後編) #12 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #13 - - 新第02巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #14 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #15 - - 新第03巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #16 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #17 - - 新第04巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #18 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #19 - - 新第05巻 暴走(5) 第05巻 エンドレスエイト #20 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 I #21 - - 新第06巻 溜息(2) 第05巻 涼宮ハルヒの溜息 II #22 - - 新第07巻 溜息(2) 第05-06巻 涼宮ハルヒの溜息 III #23 - - 新第07巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 IV #24 - - 新第08巻 溜息(2) 第06巻 涼宮ハルヒの溜息 V #25 第11話 第一話 第00巻 動揺(6) 未制作 朝比奈ミクルの冒険 Episode00 #26 第12話 第十二話 第06巻 動揺(6) 第06巻 ライブアライブ #27 第13話 第十一話 第06巻 暴走(5) 第07巻 射手座の日 #28 第14話 第九話 第07巻 オリジナル 未制作 サムデイ イン ザ レイン
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4012.html
平泉は中々遠く、俺達は小さな町に寄ったり野宿をしたりして、漸く目的地に辿り着いた。 平泉に若者は少なく、どちらかと言えば老人たちがひっそりとこの村で暮らしている…そんなイメージが俺の頭の中に生まれた キョン「ここが平泉か」 ハルヒ「なんていうか・・・本当に村ね。でもかなり古くからあるそうね」 古泉「かつては奥州藤原氏が権力を振るった土地でもありますからね」 キョン「とりあえず洞窟とやらは何処にあるんだ?」 ハルヒ「聞き込みでもしてみましょう」 みくる「あ、あのぅ…すみません」 村民「ん・・・?なにかのう?」 みくる「この村の付近に洞窟ってありませんかぁ?」 村民「洞窟じゃと・・?ぬしら盗賊か!?」 長門「違う…私達はただの旅人」 村民「ふん。どうせ盗賊じゃろうがなんじゃろうがあの洞窟に入っては二度と出てこれん」 キョン「何故だ?」 村民「簡単なことじゃ。財宝目当てにあの洞窟に入っていった盗賊どもで、生きて返って来たものは一人もおらん」 古泉「なるほど…確かに腕磨きには丁度良い場所かも知れません」 村民「わしは知らんぞ。入るなら勝手に行くがよい。この村を出て北の森を探せば入口が見つかるじゃろうて」 キョン「…とりあえず大体の場所は分った。今日はこの宿屋で一泊して、明日に備えよう」 ハルヒ「そうね。それにしても全くあのおじいさん、盗賊と私達を一緒にしないで貰いたいわ」 キョン「財宝を取って返って見せつけてやれば良い。とにかく今日は早く寝るぞ」 古泉「了解しました」 長門「・・・いっくんと一緒に寝る(ぎゅう)」 ハルヒ「古泉君が寝れないだろうから今日は我慢してあげなさい」 長門「・・・わかった」 みくる「じゃあ涼宮さんと長門さんと私はこっちの部屋で寝ますね」 キョン「わかりました。俺と古泉は向こうの部屋で寝ます。おやすみなさい」 みくる「はい、おやすみなさい」 ハルヒ「なによキョン・・・あたしにもオヤスミぐらい言いなさいよ」 宿屋の主人「本当に行くのかい?」 キョン「ええ」 主人「あの洞窟に行って帰って来た者はいない…知っているだろう?」 ハルヒ「大丈夫よ!私達は盗賊なんかよりずっと強いんだから!!」 主人「しかし君達は若い・・・もしかしたら命を落とすかもしれないんだよ?」 古泉「危ないと感じたら引き返しますよ。心配は御無用です。」 主人「そうかい・・それなら良いのだけど」 キョン「生きて、帰ってきますから」 主人「・・・よし、わかった!僕が洞窟まで君たちを案内しよう」 俺達五人は宿屋の主人案内の元、義経の財宝が眠っているといわれる洞窟まで辿り着いた 主人「健闘を祈るよ。それじゃあ・・・」 みくる「案内ありがとうございましたぁ」 キョン「さて、行くか・・・」 ハルヒ「面白くなってきたわね!」 洞窟の中自体は普通の洞窟より少し暗く、朝比奈さんは入った瞬間から幾らか気分悪そうにしている。 キョン「しかし薄暗い洞窟だな」 ハルヒ「そうね。そろそろ大ムカデやネズミの一匹ぐらい出てきても良さそうなんだけど」 みくる「どっひゃああああああああああああああああああああ!!!」 天使が叫びをあげたような、あらゆる意味で神々しい声が洞窟中に響きわたる。 一体どうしたんですか朝比奈さん? みくる「は、ははははは白骨ぅ・・・はっこつですぅうううううう」 キョン「それは何処の洞窟でも白骨ぐらいありま・・・・なっ!?」 ハルヒ「なにこれ・・・」 古泉「これは・・・」 長門「・・・・・」 目の前に広がる白骨の山 白骨の一つや二つなら少なからず見かける機会は在るだろうが、この量は・・・ 古泉「異常…ですね。流石は財宝の眠る洞窟です」 みくる「ふ・・・ふええ・・・」 古泉「おっと!大丈夫ですか?」 みくる「ちょ、ちょっとだけダメかもです・・・」 古泉「気をしっかり持ってください。貴方が気絶したら誰が僕達を治療するんですか?」 みくる「は、はいい・・」 長門「・・・わざと気絶したフリをしていっくんに近づいた?」 みくる「ふえ?」 長門「・・・そうなんだ?」 みくる「ち、ちがいますぅ!」 長門「無駄な乳には渡さない」 みくる「む、無駄な乳ってなんですかあ!!」 以外にも長門は嫉妬深いらしく、古泉に支えられている朝比奈さんを敵視している。 おいおい朝比奈さんは敵じゃないぜ。術とか間違っても使うなよ ・・・あれ?朝比奈さん?後ろにある火はなんです? みくる「火・・?」 キョン「・・・っ魂火だ!!」 ハルヒ「魂火ですって!?なんでそんなものが?」 キョン「わからん!だが間違いなく倒すべきだ」 古泉「同感です。魂火は怨念を宿していると言われます」 宙にふわふわと浮いているそれは突如、マイエンジェル朝比奈さんに向って炎を吐いてきた みくる「ひ、ひゃああああ!?」 キョン「この魂火やりやがったな!乱闘だ!乱闘パーティだ!!」 古泉「陰陽道・火鬼」 ゴオオオオオオ 火の鬼はみるみる内に魂火を覆い、そのまま消えてしまった キョン「・・・ォイ古泉」 古泉「なんでしょう?」 キョン「俺があの魂火を斬りたかったんだけどな」 古泉「とりあえず早めに始末をと思いまして、申し訳御座いません」 キョン「・・・・まあいいさ。同じようなのが沢山出てきたからな」 ハルヒ「これはちょっと大変そうね」 目の前には魂火の大群が見える 白骨の次は魂火の大群かよ。勘弁してくれ みくる「お、おおきなムカデやネズミなんて出てこないじゃないですかああああああ」 ハルヒ「うっさいわね!何時もはそれしか出てこないのよ!!」 長門「とりあえず全掃・・・氷術・水竜」 ハルヒ「そうね!久しぶりにアタシの双剣を使う時が来たようね!!どりゃあああああ」 古泉「長門さんに同感です。とりあえず倒してしまいましょう。陰陽道・幽軍」 長門の放った水の竜と、古泉の放ったぽい変な怨気の大群が瞬く間に大量の魂火を消していく。 ハルヒは双剣を駆使して、俺も俺なりに剣を振るってちょこちょこ敵を倒していく もちろん俺は朝比奈さんの前に立って戦っている。当たり前だ キョン「こんなもんか?」 ハルヒ「そのようね」 みくる「お、驚きましたぁ・・・」 キョン「・・・で前に見える青い霧は一体何なんだ?」 古泉「何やら髑髏にも見えますね」 みくる「た、ただの霧・・・ですよねー?」 霧「・・・・・」 みくる「た、ただの霧っぽいです!さ、さささささ先に進みましょう!!」 霧「・・・ォォ」 キョン「今、何か声がしたような・・・」 みくる「き、きのせいであって欲しいですううううう」 霧「ォオオオオオオオオオオオオ!!!」 キョン「ちょ、見るからに霧ドクロだ!!」 古泉「怨霧、ですね。なるほど、これは盗賊等では生きて帰れない訳です」 ハルヒ「そんなこと言ってないで戦うわよ!双剣・覇鬼蛇切り!!」 スカッスカッ 霧「オオオオオオオオオオオオ」 ハルヒ「当たらない!?」 古泉「霧状ですからね。術しか役にたたないでしょう」 長門「・・・・氷術・水突乱舞」 ドシュッドシュツ!! 怨霧「オオオオオオオ!!」 キョン「聞いてるみたいだな!行くぜ!炎術・火走!!」 ゴオオオオオ 怨霧「アオオオオオ・・・・ォォォォ」 キョン「ラスト頼むぜハルヒ!」 ハルヒ「まっかせなさい!この忍具でどう?伝火はっしゃー!!」 キョン「もったいない!」 ハルヒ「いいのよ!」 怨霧「ォォォォ・・・・・・・ォ・・・・」 キョン「まあ、倒せたようだし良しとするか。」 ハルヒ「伝火、切れちゃったから新しいの買っといてね」 キョン「なんですとっ!?」 ???『「盗賊…まだ懲りずに入り込んで来るか…。我が主の財宝を狙いし愚かな輩共よ…与えよう、貴様等に鮮血の死を……与えよう、死しても尚、永遠の苦しみを…」』 俺達がしばらく洞窟を歩くと、まるで下に降りろと言わんばかりに階段が用意されていた。 キョン「誘っているな」 古泉「でしょうね。降りるしかないでしょう」 みくる「なんかこの下、不気味ですぅ・・」 ハルヒ「洞窟入った時も同じようなこと言ってなかった?さっさと行くわよ!!」 長門「・・・確かに何か威圧感はある」 下へ降りると再び白骨の山が御丁寧に俺達を迎えてくれた キョン「白骨の山、再びだな・・・」 ハルヒ「この格好は剣術家ね・・・ここまで来れるなんて結構な使い手だったんだわ」 キョン「って事はこの先にかなりの脅威が待ち受けてるってことか・・・」 みくる「あ、あのうみなさぁん・・・」 ハルヒ「何よみくるちゃん」 みくる「疲れましたぁ・・・」 ハルヒ「だらしないわねえ全く」 古泉「確かにもう何時間か歩きづめですね。少し休みましょう。それにしても広い洞窟です」 確かに広い・・・こんな広い洞窟を歩くのは初めてだな 長門「・・・やっぱり」 キョン「どうした?」 長門「・・・・休息を取ってから説明する」 しばし休息を取った俺達は立ち上がると、長門先頭の元再び歩き出した キョン「それでどうしたんだ?」 少しばかり小走りで何やら赤い印が地面に描いてあるところまで行く長門 もしやあれに何かヒントが隠されているのか? 長門「下を見て・・・」 古泉「・・・これは!?」 キョン「どうしたんだ古泉?」 古泉「これは移動の呪印です。この上に乗ると体ごと別の場所に移動してしまいます」 キョン「じゃあ…」 古泉「この先にとてつもない何かが待ち受けているか…もしくは財宝が在るか、と言ったところでしょう」 長門「さっき見た白骨の山も謎が解けるかも・・・」 ハルヒ「面白いわ!早く五人で乗りましょう!!」 キョン「待て!ハルっ・・・」 ハルヒ「もう乗っちゃったわよ!みんなも早く~」 キョン「あの馬鹿・・・」 古泉「覚悟を決めるしか無いようですね?」 キョン「・・・だな。いくぞ皆!」 俺達五人は一斉に移動の呪印に乗り込んだ 涼宮ハルヒの忍劇7
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/873.html
「ただの人間には興味がありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者、異世界人がい たら、あたしのところに来なさい。以上!」 と、受験勉強のストレスから開放されて無事に高校生となり、その初日の挨拶で涼宮ハ ルヒが、かなり電波ゆんゆん……もとい、個性的な自己紹介をしてクラス全員をドン引き させたその日も、今では遠い昔のこと。 その後に続く宇宙人とのファーストコンタクト、未来人との遭遇、地域限定超能力者と の出会いを経てオレが巻き込まれた事件も──時には死にそうな目にあったが──今では いい思い出さ。 そう、すべては思い出になった。 結局、ハルヒの能力は完全になくなりこそはしなかったが、安定の一途を辿り、よほど のショックを与えない限り発現することはないらしい。だから、何かが終わったわけでも なく、何かが始まったわけでもない。結局、非日常的なことはオレたちSOS団にとって 日常的なこととなり、日々はただ流れた。 それぞれの今の状況を、軽く説明しようか。 長門はハルヒ観測の役目がまだ続いているのか、あいつと同じ大学に入学した。ただ、 一人の人間として生きる道も与えられたのか、将来は国会図書館の司書を目指している風 だ。あいつが公務員になるのは、どうも想像できないね。 朝比奈さんは未来へ戻った。いや、明確な別れの言葉を受け取ったわけではないから、 まだちょくちょくとこの時間帯にやってくることはあるようだ。ただ、その風貌は高校生 時代にオレを助けてくれた朝比奈さん(大)に通じる雰囲気となり、過去のオレたちを助 けるために過去と現在と未来を行き来していることだろう。 古泉は若き学生起業家だ。オレと違って頭のデキがよかったのか、それとも『機関』の 後ろ盾があったからなのか、IT関連でそこそこの業績を残している。無論、ハルヒの能 力が完全に消えたわけではないので、地域限定の超能力は健在。年に1回か2回は《神人》 退治をやってるようだが、昔ほどの重圧ではなくなったと言っていた。 そしてハルヒは、何を思ったのか考古学の道を目指して勉学に励んでいる。曰く「歴史 に埋もれた世界の不思議をすべて解き明かすのよ!」と息巻いていたが、まぁ、昔に比べ ると現実的というか、地に足が着いた意見というか、あいつも大人になったということか。 かくいうオレも大人になり──といっても、何が子供で何が大人なのか、その境界線が はっきりしないまま年齢ばかりが上書きされて──今では一人で暮らしている。残念なが ら、ハルヒと同じ大学ではない。 都内の三流……とまでは言わないが、決して一流とも言えない大学に通い、地元での知 り合いとも離れ、オレはオレで我が道を進んでいる。今ではこっちでも知り合いが出来た。 ただまぁ……艶っぽい話は何もないがね。 決してハルヒたちと一緒の道に進むのがイヤだったわけではない。かといって、是が非 でも一緒に進もうと思っていたわけでもない。なんだかんだと、ハルヒたちと過ごした三 年間は楽しかった。ただ、楽しかったからこそ距離を置いた。何故そうしたのかは、オレ がただ単に天の邪鬼だからかもしれないし、ハルヒがオレと距離を置くことを望んだから、 かもしれない。 その切っ掛けはたぶん……いや、間違いなく高校の卒業式だろう。各々の進路も決まり、 オレとハルヒが離ればなれになることが確定事項となっていたその日のことを、オレは今 でもはっきり覚えている。 ……………… ………… …… 形式通りの卒業式が終わり、女子生徒は別れに涙し、男子生徒は三年間恨み続けた教師 にどうやってお礼参りをしてやろうかと話し合う中、オレは毎日の放課後に通っていた文 芸部部室に向かっていた。誰かに呼ばれたわけでも、何か目的があったわけでもない。た だ、今日がこの道を通る最後の日だと思うと、やや感傷的にもなる。 いつもより遅い足取りで部室へ向かい、扉を開けると「あんたも来たの?」と、ハルヒ 一人だけがそこにいた。 「姿が見えないと思ってたが、ここにいたのか」 「そりゃあね、団長たるあたしが高校生活最後の日に、ここへ来るのはあたりまえじゃない」 「おまえでも感傷的になってるってわけか」 「おまえで『も』は余計ね」 パイプ椅子を引っ張り出し、オレは腰を下ろす。ハルヒはオレと2~3会話を交わした だけで、あとは黙って外を見ていた。耐えようがない沈黙、というわけでもないが、いつ も沈黙を守り続ける長門がそこにいるような、落ち着いた気分にもなれない。 オレの視線は自然とハルヒの後ろ姿に向けられていた。 「ねぇ、キョン」 オレの視線に気づいたのか、それとも沈黙に耐えられなくなったのか、ハルヒの方から 呼びかけてきた。「なんだ?」と返事をするも、こちらに目を向けようとはしない。 「あんた……だけじゃないけど……あたしに隠れて、いつもこそこそ何をしてたの?」 その言葉は、何の話だと惚けられるほど軽いものではなかった。はっきりすべてを知っ ているわけではないが、何かある、と勘の良いこいつは見抜いていたんだろう。 「何って……未来人と一緒に時間旅行をしたり、宇宙人と脅威の謎生物と戦ったり、超能 力者と悪の秘密結社を叩き潰したり……かな」 すべて本当のことだが、オレは努めてふざけ調子でそう言うと、窓の外に顔を向けてい たハルヒは、顔半分を振り向かせてオレを睨んできた。 「……それ、本気で言ってる?」 「本気か冗談か、どっちだと思う?」 「……言いたくないってわけね」 古泉の真似をして、オレは肩をすくめてみせる。出会った当初なら襟首掴まれて締め上 げられるところだが、今ではすっかり丸くなったもんだ。はぁ、っとため息をついて、オ レの方へしっかりと向き直った。 「ま、そういうことにしといてあげる。あたしも……この三年間、楽しかったしね」 どこかメランコリックな表情を見せるハルヒに、オレは気になることを聞いてみた。 「SOS団はこのまま解散か?」 SOS団を作ったのはハルヒだ。だから、解散させるか存続させるかを決定するのは、 ハルヒの役目だ。オレたち団員は……ま、従うだけさ。 「まさか。あんたたちは、あたしの忠実な下僕なの。呼んだらすぐに集まらないと承知し ないわよ。特にあんたは、一番遠くに行っちゃうんだし。遅刻したら、罰金だからね」 ハルヒはオレたちとの繋がりを断ち切ろうと思ってはいないらしい。ただ、それが未来 永劫続くとも思っていなかったんだろう。いつもは語尾にエクスクラメーションマークが 似合うのに、その日に限っては言葉に力がない。 「悪しき慣習のおかげで、罰金に対する免役がついたからな。あまり強制力はないぜ」 「あら、学生レベルと同じと思わないほうがいいわよ?」 「大学生も学生だろ」 「くだらない言い訳なんて、みっともないわ」 「まぁ……努力はするさ」 「そうね、あんたが一番頼りないんだから、努力してよね」 ああ、とオレが返事をすると、再び沈黙が訪れた。 残念ながら、そのときのオレには自分からハルヒに振れるような話題の持ち合わせはな かった。語るべき言葉はこの三年間で散々出尽くしたし、今更言うべき言葉など、何もない。 「んじゃ、オレはそろそろ行くよ」 「……ああ、そうだ。あんたに言うことあったの、忘れてたわ」 腰を上げたオレに向かって独り言のように、本当にたった今思い出したことのように、 ハルヒが口を開いた。その言葉にオレへの呼びかけがなければ、そのまま出て行きそうに なるくらい、本当にどうでもいいような口調だった。 「あたし、あんたのこと好きよ」 はにかむような甘酸っぱさも、照れるような奥ゆかしさもなく、それが世界の常識だか らただ告げただけのような──これと言った感情の機微もなくハルヒはそう言った。 だからオレは、すぐに何か言うことができなかった。驚きもしなかったし、嬉しさも感 じなかった。心の中がざわつく感じもなければ、浮かれることもない。そのことを予め知 っていたかのように、極めて冷静に返事をしていた。 「いつから?」 「ずっと前から。SOS団を作ったときからかしら」 「それを今、言うのか」 「今だからよ。昔、言ったでしょ? 恋愛感情なんて一時の気の迷い、精神病みたいなも んだって。でも三年間、その気持ちは消えなかった。三年経っても消えないなら、それは あたしの純粋な気持ちってことでしょ? ナチュラルなものなの。それを確かめるのに必 要な時間が、あたしには三年必要だっただけ。だから、今」 「オレは……」 「ああ、あんたの気持ちなんていいわ。ただ、あたしがそれを言いたかっただけだから… …三年間、ありがとう」 ──ありがとう、か。こいつの口から感謝の言葉が出てくるとはね、青天の霹靂ってヤツだ。 握手でも求めているかのように、ハルヒが手を突き出してきた。こんなしおらしく、け れどどこかサバサバとした表情は初めて見る。三年間、片時も離れずハルヒを見てきたつ もりだが、オレでもまだ知らない顔があったのかと──そんなことを思う。 オレは握手を求めるハルヒの手を握るべきかどうか、迷った。手を握り合うようなこと は、この三年間で幾度となくあったが、今はどこか照れる。 それでも、心を決めて手を差し伸べようとポケットから取り出すと、ぐいっとハルヒの 方から掴んできて力任せに引っ張られた。 相変わらずの馬鹿力め。不意打ちとは言え、男をぐらつかせる力を出せるのは、おまえ くらいなもんだ。だから……今こうしてオレの唇とおまえの唇が触れ合ってるのは、おま えのせいなんだぞ。 「じゃあね、キョン」 短いキスのあと、ハルヒはこの日初めて、笑顔を浮かべた。何かを吹っ切ったように、 どこか切なそうに。 それが──高校時代にオレが見た、最後のハルヒの姿だった。 …… ………… ……………… そして三年の月日が流れ、今に至る。あれからオレは、ハルヒに会っていない。あの日 の部室であいつは呼び出すようなことを言っていたが、実際にはそんなことはなかった。 かといって、まったく疎遠になってるわけでも……なってるのかな。卒業直後はメール のやりとりを、それこそ毎日のように行っていた。ただ今はそれほど頻繁なわけではない。 週に1~2通。タイミングが悪ければ、月1だっておかしくない。 それは互いにやるべきことが出来たからだし、互いの人生を歩み始めたからだ。人はそ れぞれ歩むべき道があり、オレとハルヒは高校を卒業すると同時に道が分かれた。 ただ、それだけ。それだけだと思っていた。 その日の朝、電話が鳴るまでは。 五月のゴールデンウィーク明け、妹が東京見物と称してオレのアパートを占拠していた 嵐が昨日でようやく通過したその日の朝のことだ。寝不足続きで昏々と眠り続けていたオ レは、間断なく鳴り続ける携帯の着音で無理矢理たたき起こされた。 乱雑に放り投げてある携帯に手を取り、不機嫌極まりない心持ちで通話ボタンを押す。 画面に映っている着信履歴を見なかったのは、一生の不覚と言えるだろう。 「はい、どちらさん?」 『も──し、み──です』 不機嫌極まりない声で電話に出たオレは、相手がすぐに理解できなかった。寝惚けてた ってのもあるだろう。昼夜逆転生活を余儀なくされたため、寝酒をかっくらったせいもあ る。おまけにアパートの立地が悪いので、よく電波が途切れることも原因のひとつに上げ ておこう。 「あ、誰だって?」 寝不足に苛々も相まって、最初より口調がきつくなってたかもしれない。布団から抜け 出して窓際まで移動しつつ、早朝から電話をかけてきた不躾な相手に、オレはつっけんど んに聞き返していた。 『ひゃうっ。あ、あの……朝比奈みくるです。えっと、今大丈夫ですか?』 「え?」 オレは携帯を耳から離し、着信相手の番号と名前を見た。ここしばらくご無沙汰だった 朝比奈さんの番号で間違いない。一気に目が覚めるとともに、思わず青ざめたね。 「あ、ああ、大丈夫です。すいません、電波状態がよくないもので」 『それより、今日って何日ですか?』 なんだそれは? というのが、正直な感想だった。気分を害されたんじゃないかと思っ た、オレのピュアな気持ちをわずかばかりでも返していただきたい。 こうして朝比奈さんと会話をするのも、実に久しぶりだ。過去と未来を行き来している 彼女には、こちらから連絡を取る手段がない。やんごとなき事情があるときは、彼女がこ の時間で借りているマンションにレトロな手紙を送っておくしかない。どうしても朝比奈 さんからの連絡待ちになってしまうんだ。 「なんですか、それ?」 『今、キョンくんって東京のアパートですよね? あたしの勘違いならいいんですけど… …今日、五月のゴールデンウィーク明けですよね?』 「そうですね、それで合ってますよ」 ちらりとカレンダーに目を向けて、妙な確認を取ってくる朝比奈さんの言葉を肯定する。 時間旅行を続けていて曜日感覚がおかしくなった、なんてことは、昔の朝比奈さんなら十 分ありえるんだが……今もそうなんだろうか? 『キョンくん、不躾な質問でゴメンだけど……そこに今、涼宮さんいる?』 「え、ハルヒ……ですか?」 なんでそこでハルヒなんだ? 「いませんよ」 『ええええええっ!』 ガラスさえもぶち破りそうな超音波に、オレは咄嗟に携帯から耳を話した。なんなんだ、 いったい? 「どうしたんですか?」 『あ、あの、キョンくん、今日はどこにも行っちゃだめですよ! すぐに連絡しますから、 そこで待っててください!』 「それはいいですけど、」 ちゃんと説明してください、と言わせて貰えずに通話は切られた。 唐突に電話をしてきたかと思えば、意味不明な切り方。まったくもって朝比奈さんらし くない。高校を卒業してからは、唐突な行動が確かに増えていたが、それもすべて過去に オレが体験したことと合わせてみれば納得できる範囲のもの。 けれど今日の電話だけは、あまりにもらしくない。いや、今の朝比奈さんらしいと言え ば、らしい行動か。オレが高校時代に会っていた朝比奈さん(大)と同じような、秘密を 隠している『らしさ』だ。 ──また何か起きたんだな…… と、オレは朧気ながらに考えた。けれど今はもう、オレがしゃしゃり出るようなことも あるまい。ハルヒ中心のドタバタ騒ぎは幕を下ろし、あまつさえオレとハルヒの道は分か れてしまった。今のオレにできることは、昔話を語るくらいさ。 そんなことを薄ぼんやり考えていると、また携帯が鳴った。今度はちゃんとディスプレ イに目を通す。朝比奈さんだ。 「もしもし?」 『今からそっちに、えっと、たぶん古泉くんが行くと思います。合流したら、すぐこっち に来てください』 まるで高校時代のハルヒからの電話みたいだ。定型文の挨拶すらなく、朝比奈さんは電 話口で一気にまくし立てた。 「古泉ですか? なんだってあいつが、」 『あたしは長門さんと一緒にいますから、詳しくは合流してから。キョンくん、待ってま すから、必ず来てくださいっ』 がちゃり、と切れた。もうちょっと甘い話をしませんか、朝比奈さん。 なんて感傷に浸る間もなく、呼び鈴が鳴らされる。このまま布団の中に潜り込んで夢の 世界に旅立とうかとも思ったが、朝比奈さんたっての願いとあればそうもいくまい。 「ご無沙汰してます」 「早かったな」 久しぶりに見る古泉は、学生時代に散々見せていた笑みを潜めていた。せっかくの再会 だ、作り物でも笑みを見せてくれたっていいだろうに。 「笑っていられる状況ならばそうもしますが、今は緊急事態なもので」 「緊急事態だって?」 こいつが緊急事態ということは、近年希にみる巨大な閉鎖空間でも出来たか? そうだ ったら、ここ最近のことを考えれば緊急事態だな。けれど何故、今になってオレを引っ張 り出すんだ。そもそもオレを巻き込む理由なんてあるのか? 「朝比奈さんから何も聞いていませんか? ともかく、時間が惜しいのですぐに行きますよ」 「寝起きなんだよ、顔くらい洗わせてくれ。つか、いったいどこに行くんだ?」 「里帰りです」 言うや否や、古泉はオレの腕を鷲づかみにすると部屋から引っ張り出し、そのままコイ ツの車の中に押し込められた。さすが社長さん、ン千万クラスの高級スポーツカーとは恐 れ入る……って、そんなことはどうでもいい。何なんだ、この強引な展開は? 「オレの都合も考えろよ! 何なんだ……わかるように説明してくれ」 ここがサーキットだとでも言いたげなドライビングで車をかっ飛ばす古泉に、オレは舌 を噛みそうになりながら問い質す。ハンドルを握る古泉は、ちらりとオレを一瞥した。 「あなたの都合を尊重したいのは山々ですが、これでも僕はあなたの友人の一人であると 考えているもので。友人の未来に関わることであれば、放っておけませんよ」 「オレの未来? なんだそりゃ」 「未来について、僕は専門外です。適任者に詳しい話を聞いてください」 それっきり口を閉ざして、車は高速道路を150キロオーバーで突き進む。途中休憩一 切なしで、オレは懐かしの故郷に足を踏み入れた。 あまりの急展開だが、見慣れた景色を眺めると妙に落ち着く。懐かしさと切なさが鳩尾 あたりでぐるぐる回る。東京に出て三年、一度も戻ってきてなかったから、その思いはひ としおだ。 そんな懐郷の念に浸っているを置き去りにして、古泉が運転する車はさらに懐かしい場 所へオレを運んだ。長門のマンションだ。あいつ、まだここに住んでたのか。 昔はオレの役目だったが、今日に限っては古泉が長門の部屋のキーナンバーを入力して 呼び鈴を鳴らす。がちゃり、と音がして部屋主が通話ボタンを押したことを知らせるが、 声は聞こえない。 「長門さん、僕です。彼も連れてきました」 そう告げると、カチッと音がしてエントランスの鍵が外される。通話を終わらせた古泉 は、そのままマンションの中に入っていった。無論、ここまで連れてこられたオレだ、逃 げるわけもなく後に続いた。 見れば思い出すマンションの廊下は、体がしっかり覚えているもので、七階に上がって 長門の部屋前まで足が勝手に動く。玄関の横にある呼び鈴を鳴らすと、鍵を外して部屋主 が現れた。 「……長門か?」 正直、驚いた。朝比奈さんの成長した姿は高校時代に何度も見ているから、驚きはない。 古泉は昔とそれほど変わってないし、野郎がどう変わろうが興味はない。 けれど長門に関しては別だ。宇宙人という特性があるとは言え、女性であることに変わ りない。女性なんてのは、高校生と大学生ではがらっと印象が変わる。少女から女性にな るとでも言うのか、カワイイから綺麗に変わるもんだ。 今の長門は、まさにそれだ。細かい部分で昔のままだが、ナチュラルメイクに控えめな がらも髪をセットして、さらに身長もオレの肩くらいまで伸びて、おまけに女性らしい体 型になっていれば、そりゃ驚きもするさ。まだ成長期真っ只中だったことに、だけどな。 「……なに?」 オレの不躾な視線に気づいたのか、長門が小首をかしげる。 「いや、綺麗になったなと思ってさ」 こんな恥ずかしいセリフがすらっと出てくるのも、オレが大人になった証拠かね。 長門はその言葉を受けて睨み……いや、照れた視線と自己解釈しておこう。何も言わず に身を引いて、オレと古泉を部屋の中に招き入れた。 部屋の中は、昔に比べて生活感ある風景になっていた。それでもオレのアパートに比ら れば少ないが、生活してるなぁ、と思えるくらいには荷物が増えている。 そんな中に、朝比奈さんはいた。 コタツの前で正座して、握りしめた両手を膝の上に置き、差しだされたお茶に手をつけ た風もなく俯いている。どこかで見たことある格好だな、と思えば、オレがバイトしてい る喫茶店の女の子が店長に怒られて落ち込んでいる、そんな格好にそっくりだ。 「あ……キョンくぅ~ん」 オレと古泉に気づいて、朝比奈さんは顔を上げるや否や泣き顔になった。あまりの懐か しさにうれし泣き……って感じじゃないことは断言できる。 「ご、ごめんね、キョンくん。あ、あたし……ひっく……こ、これでも、い、一生懸命が ん、がんば……うぅ……頑張って勉強し、して……うくっ……き、禁則事項も少なく…… ひっく……な、なったんだけど……」 済みません、朝比奈さん。泣き声が混じっていて要領を得ないんですが。 困り果てたオレは頭をかいて、泣きじゃくる朝比奈さんに触れるか触れないかという力 加減で抱きしめた。あいにく古泉に無理矢理アパートから引きずり出されたもんでね、ハ ンカチの持ち合わせはないんだ。かといって、常日頃から持って歩いてるわけじゃないが。 「朝比奈さん、落ち着いてください」 「あ、あの……」 泣きやんだ朝比奈さんは、オレの腕の中で驚いているようだ。高校時代じゃ、とてもこ んな真似はできなかっただろうな、なんてオレでも思う。けれど泣きじゃくる相手には、 それ以上のショックを与えて泣きやませるのが一番なんだ。妹やイトコ連中を相手に、オ レはそれを学んだね。 「大丈夫ですね。それで、何があったんですか?」 やや名残惜しい気もするが、朝比奈さんを離してその目を見つめる。潤んで赤い瞳が魅 力的だが、次に出てきた言葉はオレの溢れる恋慕を根こそぎ奪い取るに十分な威力を秘め ていた。 「はい……あの、時空改変が行われています」 くらりと来たね。 正直、すぐには理解できなかったさ。久しぶりに聞くトンデモ話だ。平凡な日常生活を 送っていたオレに、おまけに文系のオレに、科学的な匂いが漂う話をすぐに理解できる頭 脳の持ち合わせなんてあるわけがない。 そもそも──時空改変だって? それはあれか、オレが高校1年の時に遭遇した、長門 が引き起こしたあれのことか? 「そう」 今から六年前に事を起こした張本人が、オレの問いかけを肯定する……と、今の言い方 はちょっとひどいな。何がひどいかはわからんが、ひどい気がする。ただ、オレも急な話 で混乱してるんだ。そこはわかってくれ。 長門は頷き、説明してくれた。 「今回の改変は劇的な変化はない。緩やかに、誰にも気づかれず行われた。わたしは現在 もいかなる時間帯における自分の異時間同位体との接続コードを凍結している。そうでな ければ気づいたかもしれないが、手遅れ」 「手遅れって……そもそも、何がどう改変されているんだ? オレには何も変わってない ように思うんだが……」 「そうです。だから、今まであたしも気づかなかったんです。でも今日、あたしが知って いる未来とは決定的に違うことが起きているんです」 落ち着きを取り戻した朝比奈さんが、長門の説明の後に続く。未来のことに関しては、 やはりこの人に聞くしかない。 「その違いって、何ですか?」 「今日は、あたしが知る限りでは、キョンくんと涼宮さんが入籍する日なんです」 …………。 いや、うん。正直、今の瞬間に意識がぶっ飛んでたね。マンガ的表現をするならば、口 から魂が抜け出たイラストがピッタリ当てはまるだろうさ。 なんだって? オレとハルヒが入籍? そんなバカな。 そもそも、それが本当の話だったとして、オレとハルヒの入籍が今日じゃないから時空 改変されてます、って考えるのは短絡的じゃないか? 前に朝比奈さんも言ってただろう。 時間の流れはちょっとした歪みなら修正されると。朝比奈さんが知る未来と微妙にズレて いるからって、そこまで話を飛躍させるのはどうなんだ? 「そうです。ちょっとした時間の歪みなら、確かに修正されます。でも……キョンくんと 涼宮さんの結婚は、そんなちょっとした歪みじゃないんです」 「……どういうことです?」 「えっと……それは今のあたしでも禁則事項です。でも、キョンくんと涼宮さんの結婚は とても重要なことなんです。あたしが知る未来のためにも、この世界のためにも」 未来のため、世界のためか。これは……そうだな、今だからこそ言うべきか。言ってお かなくちゃならないだろうな。 「朝比奈さん、正直なことを言いますが、オレはハルヒと結婚することに文句はありませ ん。ただですね、オレもどうせ結婚するなら、自分が惚れ込んで、相手もオレのことを好 きでいてくれる女性と結婚したいんです。誰でもいいってわけじゃありません。朝比奈さ んは、周りから『こいつと結婚しないと世界がおかしなことになるぞ』って言われて、結 婚できますか?」 「それは……」 「それにですね、もしここでオレが『実は朝比奈さんのことが好きです』とか『長門のこ とが好きなんだ』って告白したら、それでも朝比奈さんはオレに『ハルヒと結婚しろ』っ て言うんですか?」 オレの言葉に、朝比奈さんはまた、泣きそうな顔になった。その表情だけで、オレの言 いたかったことを理解してくれたんだと分かる。そう思う。 つまり、オレは世界のため、未来のためっていう大義名分で動くことは、もうできない。 ほかの連中と違って、オレは凡百な人間だ。正義の味方でもなければ、自己犠牲で得た 平和に感動できる純粋な心根の人間でもない。人並みに欲望もあって、人並みに臆病で、 人並みに安定した生活を望む、ただの人間なんだ。電車の中で目の前に年寄りがいれば席 を譲るが、戦争を止めるために平和維持軍に入隊できるヤツじゃない、ってことさ。 「そんな顔しないでください。困らせるつもりじゃないんです。ただ、分かって欲しかっ ただけなんですよ。もう、未来のためとか世界のためとかで自分を犠牲にできるほど、純 粋じゃないんです」 「確かにその通りですね。あなたの意見はもっともですし、何も間違っていませんよ」 そう言って頷き、古泉がオレの意見に賛同してくれた。こいつがそんな風にオレの肩を 持つとは意外だ。 そう思っていたんだが……。 「今の朝比奈さんの発言も、やや的を外していますしね。他のお二人がどのように考えて おられるのかわかりませんが……僕があなたをここへお連れするときの言葉を覚えていま すか?」 おいおい、人の記憶力を疑うような発現だな。たった数時間前の話を忘れるほど、ボケ ちゃいねぇよ。 「ならば安心です。こう考えてください。あなたと涼宮さんの結婚で世界の安定が得られ るのは、ことのついで……おまけみたいなものです。重要なのは、あなたが本来結ばれる べき人との未来が消失していることです。これはあなた自身にとっては人ごとではありま せんし、一大事ではありませんか?」 前口上が長いのは相変わらずか。何が言いたいんだ、古泉。 「友人のバラ色の未来が失われようとしているのです。それを救うのは当然でしょう?」 この野郎……何がバラ色の未来だ。ハルヒとの結婚が本当にバラ色だとでも思っている のか? あの天上天下唯我独尊の団長さまと四六時中顔を付き合わせることになるんだ ぞ。それのどこが幸せだって言うんだ。 「本当にそのようにお考えで?」 ええい、そのなんでも見透かしたような薄ら笑いはやめろ。 「……あのな、長門も言ったじゃないか。仮に、今の言葉がオレのごまかしだとしよう。 でも、もう手遅れなんだろ? 今回の時空改変を起こした張本人は、話を聞く限りハルヒ のようだが、過去に遡ってアイツに修正プログラムを打ち込んでも、もうダメなんだろ?」 「そう」 長門の言うことはいつも端的だ。余計なことを言わず、事実だけを告げる。こいつがダ メだというのなら、何をどうやってもダメなのさ。 「ほらみろ。どっちにしろ、」 「でも」 息巻くオレの出鼻をくじくように、長門は口を閉ざさなかった。 ……でも、だって? 「時空改変が行われたその時間に、楔を打ち込めば修正することは可能」 長門……それは全然ダメな状況じゃないぞ。まだ修正する可能性が残ってるじゃないか。 「ちょっと待て。何をどうしろって言うんだ?」 「今は正しき未来と謝った未来に道が分かれている状態。その分岐は緩やかだが、三年と いう月日を経て決定的な違いをもたらした。ならば道が分かれたその時間において、歪み をもたらした道に進まないよう正しき道へ楔を打ち込めば、三年の月日を経て正しい時間 軸に戻る可能性は高い。ただ──」 長門はそこで言葉を途切れさせて視線を宙に彷徨わせた。 「──道が分かれた時間がいつなのか、それはわたしにもわからない」 口を閉ざし、長門はオレをじっと見つめた。その視線は「あなたなら分かるはず」と言 わんばかりの目つきだ。 確かに思い当たるときはある。おそらく、間違いない。 ──高校卒業のあの日、ハルヒにキスされたその日…… あの日から、オレとハルヒの道は分かれた。オレはそう確信している。もしその日でな かったとしたら、他に思い当たる日はない。もし過去に遡るなら、その日以外にありえない。 そしてもうひとつ、悩まなければならないことがある。 長門は「楔を打ち込む」と言った。ならばその「楔」とは何を指すんだ? このまま過 去に遡ったとして、何をどうすればいいか分からないままでは、何もできないじゃないか。 「キョンくん、その時間に行きましょう」 と、朝比奈さんが悩むオレに向かってそう言った。 「あれこれ考えてちゃダメですっ! あたしたち、今までみんなで協力して何とかやって きたじゃないですか! 行動しなくちゃ、何も始まらないんですっ!」 そう……だな。ああ、確かにそうだ。昔からそうじゃないか。SOS団絡みの出来事は、 いつも訳も分からないまま巻き込まれて、それでもなんとかやってきた。今更あれこれ考 えるのはオレらしくない。 「今になって、ひとつだけわかったことがある」 はぁ~っ、とこれ見よがしにため息を吐いて、オレは目の前の三人を睨み付ける。出来 る限り、渋面を作ったつもりだ。 「SOS団なんておかしな団体に所属していると、どいつもこいつもお人好しになるんだな」 それなのに、朝比奈さんや古泉は言うに及ばず、長門でさえもわずかに微笑んだように見えた。 どさっと、それこそ尾てい骨が砕けるような勢いで地面にへたり込むのは、男二人の役 目。方や女性二人は慣れたもので、けろりとしている。 ここは、いつの日だったか朝比奈さんと歩いた公園の常緑樹の中。今がいつなのかすぐ にはわからないが、長門のマンションの中からこんなところに移動しているとなれば、時 間遡航に成功したのだろう。これがただの瞬間移動だとしても驚異的だがね。 「いやあ……話には聞いていましたが、これほどの衝撃とは思いませんでしたよ」 どうやら古泉もオレと同じ感想を持ったようだ。 時間旅行の目眩。嘔吐寸前までに世界がぐるぐる周り、目を閉じていても光が瞬く感じ は、極悪な代物と断言しても生ぬるい。どうしてこんなのが平気なのか、朝比奈さんにじ っくり聞いてみたいもんだ。 「というか、なんでおまえや長門まで着いてくるんだ? オレと朝比奈さんだけで十分だろ」 「せっかくの機会ですからね。時間旅行というものをやってみたかったんですよ。あなた の邪魔をするつもりはありませんので」 邪魔するとかしないとか、そういう問題じゃないないだろ。そもそも朝比奈さん、いつ からそんな適当になったんですか。 「朝比奈さんを責めるのは酷というものです。僕と長門さんはその辺りで時間を潰してい ますから、お役目を果たしてきてください。よろしいですね、長門さん」 「……わかった」 何がわかったんだ長門。わかるなよ長門。おまえまで古泉みたいに時間旅行を楽しみた かっただけってのか? おいおい、いろいろ変わったな、おまえら。 「それではまた、後ほど」 敬礼のような挙手で挨拶をすると、古泉と長門は人気が途絶えた頃合いを見計らって、 公園の外に姿を消していった。 「いいんですか、あれ……」 「今日は……えっと、特例です」 特例って……朝比奈さんもいろいろ成長したもんだ。昔は禁則に次ぐ禁則で思ったこと も言えず、訳も分からないまま巻き込まれて泣いていたのにな。高校時代の庇護欲をそそ る愛くるしさが懐かしいぜ。いやまぁ、今もそうと言えばそうなんだが。 「今、いつの時代の何時ですか?」 古泉と長門の奇行や、朝比奈さんの成長を見て感慨にふけっている場合じゃない。オレ が時間を聞くと、朝比奈さんは華奢な腕には似合わないゴツい電波時計に目を向けた。 「今はキョンくんたちが卒業した日の、午後2時を過ぎたころです」 その時間、オレは当時何をしていたかな……ええっと、ああそうか、ハルヒと二人で部 室にいて……キスされた時間か? もうちょっと前の時間かな。あのときは時間感覚が麻 痺していたから、よくわからない。 「朝比奈さん、ちょっと質問なんですが」 「はい、なんですか?」 「今回の時空改変は、どのタイミングで修正すればいいんでしょうかね? 前のときは長 門が変えた直後に戻したじゃないですか。今回もそんな感じですか?」 「えっと……前回のときはキョンくんを除いて、世界すべての記憶がその日を堺に塗り替 えられてましたよね? だからあのときは、改変直後でなければダメだったんです。でも 今回は緩やかな変化ですから……ゆっくりするわけにもいきませんけど、考える時間はあ ると思います」 考える時間か……。 「その時間ってどのくらいです?」 「ん~っと……そうですね、リミットは今日一日と思ってください。そうでなければ、あ たしたちが元時間に戻ったときに年齢がおかしなことになっちゃいますよ」 まだ時間がある、とわかっただけでも有り難いですよ。長門が言う「楔」とやらが何な のか、考える時間があるわけだからな。 とは言うものの、今回ばかりはすでにお手上げ状態だ。何しろ前回の時空改変では、最 初こそオロオロしていたが、後になって長門のヒントが出てきた。そのおかげで、オレは 役目を果たせたようなもんだ。 けれど今回は、そのヒントすらない。長門自身もどうすればいいのか分からないままの ようだ。数学者さえ頭を悩ませる難問に、小学生が挑むようこの状況を嘆かずにいられる か。おまけにその正解を見つけ出さなければ、世界は改変されたままってことになる。 「ごめんなさい、キョンくん……」 どうすべきか悩んでいたオレは、口数が少なくなっていた。そんなオレの態度を見て、 何を思ったか、朝比奈さんが頭を下げてくる。 「あたし、自分でも少しは成長できたかなって思ってたの。でも……やっぱりダメですね。 肝心なときに役立たずで」 おいおい、まったくこの人は、いったい何を言い出すんだ? 「それ、本気で言ってます?」 「……え?」 「今回のことに気づいたのも、この時間まで戻ってこられたのも、朝比奈さんのおかげじ ゃないですか。おまけに今は、過去のオレたちを助けてくれているんでしょう? 言葉じ ゃ言い表せられないくらい感謝してますよ。もっと自信をもってください──なんて、オ レに言われても慰めになりませんよね」 「そ、そんなことないですっ! あたし、ずっとキョンくんに迷惑かけっぱなしだったか ら……だから、そう言ってもらえると、すっごく嬉しいです」 真剣そのものの目で、胸の前で両手を握りしめて朝比奈さんはそう言った。 そうそう、泣き顔よりも真剣な顔、真剣な顔よりも笑顔があなたには一番似合いますよ。 ……そういえば。 ハルヒはいつも、どんな顔で笑っていたかな。出会ったころは怒ってばかりだが、SO S団を作ってからはよく笑うようになった。時にふてぶてしく、あるいは生意気そうに。 それでも最後はマグネシウム反応のような眩しいくらいの笑顔を浮かべていたな。 ……何か違和感があるな。なんだろう、この感覚は。完成したはいいけれど本来の絵と 違うジグゾーパズルが出来上がったような気分だ。 何かしっくり来ない。どこかおかしい。これはいつの時代に感じた違和感だ? 「……ああ、そうか」 我知らず、考えが唇を割いて漏れる。 あのときか。あの日の笑顔か。それが今に繋がってるっていうのか? 「どうしたんですか?」 思案に暮れるオレに向かって、朝比奈さんが不思議そうに声を掛けてくる。それでもす ぐには返事をせず、しばし考えていたオレは……やはりその考えしか思い浮かばない。思 い込みかもしれないし、間違いないと断言できる根拠もない。それでも今のオレに与えら れた情報だけでは、それくらいしか解答を導き出せない。 「朝比奈さん、もうハルヒのトンデモ能力は落ち着いているんですよね? 今のオレがあ いつに会うのはアリですか?」 「え……っと、涼宮さんの能力が減退しているのか、それともただ安定しているだけなの かによりますけど……あ、でも、今日の夜に涼宮さんは誰かと会ってますね」 「それがオレですか」 「たぶん……ごめんなさい、この日の涼宮さんの行動は一通り把握しているけれど、今回 の出来事はあたしも初めて体験することだから、確信めいたことは何も言えないの」 「ハルヒの行動がわかるだけでも有り難いですよ。それで、ハルヒが誰かと会っているっ ていうのは、何時頃の話ですか?」 「夜の……えっと、9時ごろですね」 「夜の9時?」 果て……? なにやら身に覚えのある時間だな。 「場所は公立の中学校……涼宮さんが中学時代を過ごした学校の校庭です」 ああ、なるほど。そういうことか。だからオレはまた、巻き込まれているのかね。 公立中学の校庭で夜の9時といえば、七夕の校庭ラクガキ事件の日と同じ場所、同じ時 間じゃないか。ハルヒにとってもうひとつの思い出の場所で待ち合わせする相手といえば、 一人しかいない。オレのことだが、オレじゃないヤツだ。 まだまだ活躍しなきゃならんらしいぞ、ジョン・スミス。 「その時間、ハルヒは自主的に中学まで行くんですか?」 「どうでしょう? 時間の流れがノーマライズされたものであるのなら、涼宮さんが出か けることは規定事項です。ですが、今は異常な時間なわけですから……」 この状況で、危ない橋を渡る賭け事をするほど、オレはギャンブラー気質じゃない。だ ったら素直に呼び出しておいて、憂いを払っておいたほうが無難か。 「朝比奈さん、この時代で今のオレが買い物するってのは大丈夫なんでしょうか?」 「えっと……この時間の経済を大きく左右するような買い物でなければ問題ないですけど、 何を買うんですか?」 「レターセット……かな?」 「え?」 頭の上にクエスチョンマークがふよふよ浮かんでいる朝比奈さんに、オレは肩をすくめ てみせた。 「未来人が過去とコンタクトを取るのは、手紙がお約束なんでしょう?」 色気のない封筒に、味気ない便せんを使って「あの日の校庭にあの日の時間に来られた し。J・S」と素っ気なく書き記した手紙をハルヒの家に投げ込んだオレは、ぽっかり空 いたこの時間をどうしようかと考えていた。 そもそも9時にハルヒがオレと会うということになっているのなら、その時間帯付近に 時間遡航すればよかったんじゃないか。仮にオレが手紙を出すことも規定事項に含まれて いるのなら、その役目は果たしたんだ。余計な時間をここで過ごすより、約束の時間まで 跳躍できないものだろうか。 そう朝比奈さんに提言したのだが、却下された。 「何故です?」 「まだ、古泉くんや長門さんが戻ってきてませんから……」 そういやあの二人、いったいどこをほっつき歩いてるんだ? 勝手に着いてきて、事が 終われば呼べなん……あれ? 呼べって、どうやって連絡を取れと言うんだ? この時間 じゃ携帯なんて使えないだろうし、家に電話するなんてもってのほかだ。 「朝比奈さん、長門や古泉とどうやって連絡取るんですか?」 「え? え~っと、それは……」 何気ない質問のつもりだったのだが、朝比奈さんは言葉を濁して腕時計に目を落とした。 何をそんなに時間を気にしているんだ? オレとハルヒの約束には、まだ5時間くらいは 余裕がある。それとも長門と古泉の二人と時間で待ち合わせでもしてたのか? あるいは、 時間的に気になることが他にあるとでも? 「朝比奈さん、二人がどこにいるか知ってるんですか?」 「あ、あの、別にそれは気にしなくても」 オレは再度、尋ねた。朝比奈さんは、明らかに動揺している。 ……裏があるのか。 何が特例だ。古泉と長門もこの時間帯でやることがあるから、着いてきたんじゃないか。 「あの二人はどこで何をやっているか、知っているんですね?」 「それは……えっと」 なんで口ごもるんだ、朝比奈さん。オレに言えないようなことを、あの二人はコソコソ やってるのか? だとすれば、長門が、というよりも古泉主導での企みか。あの二人の利 害が一致し、あまつさえ朝比奈さんさえも一枚噛んでいる画策。 それは今回の騒ぎのことか? まさか……今回の時空改変が狂言だとでも言い出すんじ ゃないだろうな? だってそうだろう。 オレは高校を卒業してから今日に至るまでの三年間、何かが変だと感じるようなことは 何もなかった。改変されたのか否か、と問われれば「ありえない」と答えるさ。ただ、未 来人たる朝比奈さんがそう言いだし、万能宇宙人の長門が肯定し、無駄に状況だけは把握 している古泉までも乗ってきている。 こいつらを知っているオレだ、そう言われれば信じるしかないじゃないか。もし三人が そろってオレを騙そうというのなら、オレは疑いもなく騙されるさ。 「だ、騙すなんて、そんなこと、」 わかってる。わかってるさ、朝比奈さん。古泉は……まぁ、おいとくとして、朝比奈さ んや長門がオレを騙す真似をするわけがないさ。だからこそ、なんだ。 「わかっているから、本当のことを話してくれって言ってるんです」 しばしの逡巡のあと、ふぅっ、とため息を吐いて、朝比奈さんはどうやら観念したらしい。 「キョンくんには、涼宮さんのことだけを考えていてもらいたかったんです。実は今、」 意を決して朝比奈さんが口を開くのと、それはほぼ同時に起こった。 瞬き一回分の刹那の瞬間に、周囲の景色ががらりと姿を変える。夕闇迫る朱色の空が、 雲一つない青空に変わり、堅いアスファルトの地面が足を取られそうな砂丘に変わる。 視界を奪うほどではないが黄土色の靄が辺りに漂い、平坦な空間がどこまでも続いている。 「ひゃうっ!」 朝比奈さんがオレに飛びついてきたが、オレだって何かに飛びつきたい気分だ。 なんだこれは? なんなんだ、いったい!? 「きょっ、きょきょ、キョンくん、ああの、あれ何ですかぁっ」 オレに縋り付く朝比奈さんが、オレの左手方向を指さして叫んだ。釣られて見れば、ガ キの頃にテレビでみた巨大ロボットのような巨体の、それでいてのっぺりした巨人が、両 手を鞭のようにしならせて暴れている。 まるで《神人》みたいじゃないか……って、ここは閉鎖空間なのか? なんでこんな所 にオレと朝比奈さんは引きずり込まれているんだ? 「こここ、こっち来てますよぉっ」 そんなこと、見ればわかりますって。 オレは朝比奈さんの手を取って、《神人》っぽい巨人に背を向けて走り出した。どこか に行けるわけでもないが、逃げ出したくもなるさ。とは言え、こっちが50メートル走っ たところで、相手は一歩でチャラにしちまう相手。どだい、逃げられるわけがない。 あっという間に距離を詰められ、降り注ぐ光を遮る影がオレと朝比奈さんを覆った。脳 裏に辞世の句が十個くらい浮かんだが、せめて朝比奈さんだけでも守りたい。 そう考えて、朝比奈さんを守るつもりで覆い被さって床に伏せた。そんなことをしても、 相手の質量を考えれば二人そろってぺちゃんこになることは分かっているさ。それでも、 そうしてしまうのは条件反射以外の何ものでもない。 間近で雷が落ちたように、空気が軋む。オレの体は空中に緩やかに放り投げられ……っ て、なんで放り投げられているんだ? どさり、と背中から地面に叩きつけられる。足下が柔らかい砂で助かった。受け身なん て取れるほど、機敏じゃないんだ。 機敏じゃないと言えば朝比奈さんは……と思って視線を巡らせると、地面に叩きつけら れる前にキャッチされてご無事のようだ。 「古泉……」 憎々しげに、あるいは感謝を込めて、オレは朝比奈さんを抱きかかえている微笑みエス パーを睨み付けた。 「言いたいことや聞きたいことは山のようにあるが、とりあえずは朝比奈さんを無事に守 ってくれてありがとう、と言ってやる」 「その言葉を聞いてホッとしました。てっきり、怒られるものだと思っていたので」 「怒るのはこれからだっ! なんだこれは? いったい過去まで来て、おまえと長門は何 をやってんだ! ここがどこで、なんで《神人》っぽいのが暴れているのか説明しろっ!」 怒鳴り散らすオレに、古泉は抱えていた朝比奈さんを下ろして肩をすくめた。 「残念ですが、あまり説明する時間はありません。ここは特殊空間ですから、本来の時空 間と時間の流れが違っていまして。あまりあなたをここに引き留めるわけにもいかないん ですよ」 「オレは説明しろ、と言ったんだ」 「それはここを脱出してから、長門さんに聞いてください」 古泉の体から赤い光が滲み出たかと思うと、その姿を赤光の球体へと変えて飛んでいく。 オレが初めて古泉に連れられて閉鎖空間に入り込んだときと、まったく同じ姿だ。 ってことはだ、あそこで大暴れしている巨人は、やっぱり《神人》ってことなのか? 「こっち」 ぐいっ、と首が絞まるほどの勢いで襟首を引っ張られ、口から「うげっ」っと声が漏れ た途端に、辺り一面が真っ暗になった。 別に締められてオチたわけではない。あの閉鎖空間らしき場所から、どうやら元の世界 に戻っただけのことだ。ただ……どうも入り込んだときからそれほど時間が経過したとも 思えないのに、空は夜の帳で覆われていた。 「時間がない。急いで」 オレの襟首を力任せに引っ張りながら、長門がそんなことを言った。 「ま、待て。急ぐ前にオレがオチる! 掴むなら手を掴んでくれぇっ」 必死の嘆願を聞き入れてくれたのか、長門はようやくオレの襟首から手を離してくれた。 最初から朝比奈さんの手を握ってるのと、同じようにしてくれ。 「急ぐのはいいが、おまえと古泉が何をやっていたのか説明してくれ。さっきの巨人はな んなんだ? あの空間はハルヒが作り出してたのか?」 「違う。我々に対する敵対勢力の残存兵力が、涼宮ハルヒの情報創造能力を流用して作り 出した疑似位相空間模と局地戦用人型兵器」 「敵対勢力?」 それはあれか、高校1年のころからチラホラ現れた、長門の親玉とは別種の情報生命体 やら朝比奈さんとは別種の未来人やら古泉の『機関』と対立してたヤツらのことか? け れどあいつらは……。 「それはあなたが気にすることではない。事後処理はわたしたちそれぞれが行わなければ ならないこと。先ほどの局地的非浸食性異時空間へあなたと朝比奈みくるが引き込まれた のは、わたしと古泉一樹の落ち度。済まない」 ……じゃあ何か、全部すっかり終わったもんだと思ってたのはオレだけで──朝比奈さ んは過去のオレたちを助けてくれているから別としても──長門や古泉は現在進行形で厄 介事を抱え込んでるのか? 「敵対勢力にとって、時空改変が行われ始めているこの時間帯が最後のチャンス。何かし らの接触があることは予測できる範囲」 「今は過去だろう、この時間のおまえや古泉は何をしてるんだ」 「この時間平面に存在するわたしの異時間同位体もそのことを把握しているが、わたしの 役目はあくまでもあなたと涼宮ハルヒの保全。他時間平面からの干渉に関してこの時間平 面に存在するあなたや涼宮ハルヒに敵対的接触が行われない限り、わたしが干渉すること はない」 ……クールというか、融通が利かないというか、いかにも長門らしい。 「どうして、まだ厄介事が続いていたことをオレに教えてくれなかったんだ」 「宇宙生命体の処理や未来の懸念、反社会的勢力への対処は、各々が所属する組織の問題。 あなたを巻き込むべきではないと判断したのは、わたしや朝比奈みくる、古泉一樹それぞ れの結論。あなたはには」 長門はゆっくりと、けれどしっかりオレを指さした。 「涼宮ハルヒのことだけを想ってほしい。それがわたしの……わたしたちの願い」 おまえは……おまえらはホントに……どうしていつも、人のことばかりを先に考えるん だ。そりゃオレには何もできないかもしれないが、もうちょっと頼ってくれたっていいだ ろうが! 「それは違う」 いつもより機敏に首を横に振って、長門はオレの言葉を否定した。 「今ならわかる。涼宮ハルヒは世界を変える力を持ち、あなたは人を変える力がある。三 年前まで、わたしたちはあなたに頼り続けていた。だから今は──」 長門は視線を彷徨わせ、自分の頭の中にある語録の中からもっとも適した一言を選び出 したようだ。 「──恩返し」 恩……恩ときたか。まったく、何言ってやがる。それこそお互い様じゃないか。 今までオレがどれだけ長門に……長門だけじゃない、朝比奈さんや古泉たちに助けられ たことか。オレに人を変える力がある、だって? それこそバカげている。変えたのはオ レじゃない。おまえたちが自分で変わろうと思ったから、変わったんじゃないか! 「ああああああっ!」 突如、朝比奈さんの場違いな叫び声が木霊した。 「な、なんですか突然!?」 「たっ、大変ですっ! 涼宮さんと約束の時間まで、あと30分もないですよぉ~っ」 おいおいおいおい、マジか。時間に余裕があると思っていたのに、何時の間にそんなに時 間が過ぎたんだ? 「疑似位相空間の中は通常空間と時間の流れが異なる」 先に言ってくれ長門。 「急いで、とわたしは言った」 ……ああ、そうだな。そうだった、悪かったよ。さっきまでのいい話が台無しになるか ら、そんな睨まないでくれ。 「と、とと、とにかく急ぎましょ~っ」 言われるまでもない。オレたちはハルヒが待っているであろう、公立中学校を目指して 走り出した。 なんだっていつもいつも、時間ぎりぎりになるのかね? 高校時代の市内パトロールの 時みたいに驚異的な集合時間前行動を取っていたSOS団としては、嘆かわしいことこの 上ない状況じゃないか。オレだって誰かとの待ち合わせのときは、今でも最低でも10分 前には待ち合わせ場所に着くようにしてるってのに。 「……え? あれ、うそ……なんで?」 急いでいたオレたちだったが、急に朝比奈さんが立ち止まって困惑顔を浮かべた。困惑、 というよりも青ざめている。これ以上、どんな厄介事が降りかかってきたっていうんだ。 「あの……あたしたち4人に、元時間への強制退去コードが発令されちゃいました……」 「はぁ?」 勘弁してくれ……いったいどんな厄介事のドミノ倒しだ? そもそも、いったい何の話 だ? いや、言いたいことはわかる。この時間において、オレたち4人はイレギュラーな 存在だ。だからこれ以上引っかき回さずに元の時間に戻れ、と言いたいんだろう。 だが待ってくれ。そうじゃないだろ。オレたちは改変された世界を元に戻すためにこの 時間に来ているんだ。そうじゃなかったんですか、朝比奈さん!? 「そ、そうです! でも、上の……あたしの組織のもっと上の方から、今回の改変は歴史 変化の許容範囲と見る意見もあって……だから、その」 「つまり、あなたと涼宮さんの結婚がもたらす変化より、結婚しない未来の方を選択した、 ということですか」 おまえ、古泉……何時の間に現れやがった。というか、無事だったか。 「空間の断裂がこの近くだったのは幸いですね。手間取りましたが、なんとか弱体化させ ることはできました。あとはこの時間平面の『機関』の役目です。それよりも、困った事 態ですね」 「何がだ?」 「朝比奈さんも単独で動いているわけではなく、我々の『機関』のような仕組みになって るのでしょう。そこで今回の出来事の意見が分かれており、結果、今回の時空改変は歴史 が持つ多様性のひとつ、許容範囲内の変化だったと結論づけたのではないでしょうか?」 「なんだそれは? ずいぶん勝手な話じゃないか。そもそも今回の時空改変はオレとハル ヒが結婚するかしないか、だろ? それはちょっとした歪みとかじゃなくて、未来におけ る決定的な違いを生み出すんじゃなかったのか?」 これじゃまるで、朝比奈さんが所属する組織の上が、オレらの敵対勢力の肩を持つよう なもんじゃないか。おかしくなってる未来をまともな形にするために、オレたちはこうや って過去までやってきて……まとも? ……なら、本来、朝比奈さんが知っている未来と、今こうしておかしくなっているとい う未来の違いってなんだ? オレとハルヒが結婚するかしないかで、未来が無視できない ほどの決定的な違いってなんだ? 朝比奈さんが「禁則事項」と言った、その答えはなん なんだ? 「あなたと、涼宮ハルヒの子供」 答えを言うことができない朝比奈さんに変わって、神託を下す使徒のように長門は告げた。 「確証はない。けれど考えられる選択肢のひとつ」 「どういうことだ?」 「あなたと涼宮ハルヒが結ばれることによって、涼宮ハルヒが有する情報創造能力がどの ように変化するか、あるいは受け継がれるか、それがわかる」 なんだそれは? 「……その考えは『機関』の中にもありました」 どこか言いにくそうに、古泉が長門の言葉を受け継いで話を続ける。 「涼宮さんは世界を創造するという、神の如き力を持っている。けれど体は生身の人間で す。いずれは老衰で、あるいは突発的な事故や病気で不帰の客となる日が必ず訪れます。 そのとき、世界はどうなるのか。何事もなく続くのか、あるいは消滅するのか、もしくは がらりと様変わりをするのか……それとも、力を受け継ぐ神の子が現れるのか」 「それが……ハルヒとオレの子供だとでも? それを言うなら……」 言っていいのか? それを、オレが。 「……何もオレとの子供じゃなくたっていいだろう。ハルヒが産む子供であれば、別にオ レじゃなくたって」 言うべきじゃなかった。口にして後悔した。オレが何を思ったのかは……まぁ、察してくれ。 「朝比奈さん、強制退去コードが発令されたとおっしゃいましたが、具体的にはどうなる のでしょう?」 オレが今、どんな顔をしているのかはわからない。ただ、古泉はオレの意見を無視して 朝比奈さんに話を戻した。 「朝比奈さんは立場上、元時間に戻らなければならないでしょうが、僕たちにまで強制力 がある命令とは思えません。僕たちが勝手に行動すること──そういうことにして、見逃 してはいただけませんか?」 珍しく古泉が悪巧みめいたことを言うが、朝比奈さんは力なく首を横に振った。 「強制退去コードが発令された以上、あたしに拒否権はありません。仮に拒否できたとし ても、あたしたち4人は強制的に元時間へ時間遡航させられます」 「……長門さん、その場合、あなたの力で時間遡航をキャンセルすることはできますか?」 「できなくはない。が、推奨はしない」 長門にしては珍しく、その表情に諦めの色が浮かんでいた。 「朝比奈みくるの所属する組織と敵対することになる」 「しかし……」 「やめとけ、古泉」 気持ちは嬉しいがな、これ以上、オレとハルヒのことで話をこじらせたって仕方がない。 下手すれば、朝比奈さんの立場がマズイものになる。 これがまぁ、運命ってヤツだ。もともとオレとハルヒの道は、高校卒業と同時に分かれ た。普通なら、もうそれっきりさ。けれどオレの場合、もう一度だけ道が交わるチャンス があっただけめっけもンさ。それでも交わることができなかったというのなら、それを運 命といわず、なんと言おうか。 それだけハルヒがオレ……たちと離れることを望んでいたってことだろう。あいつが一 人で進むべき道を選んだというのなら、追いかけるべきじゃない。 「あなたは……それでいいんですか?」 「いいも悪いも、もう何もできることはないだろ。オレだって……」 そうさ。オレだって出来ることがあるのなら、なんとかしたい。けれど時間がない。で きることは何もないじゃないか。諦めたくはないが、諦めざるを得ないじゃないか。 「…………まだ……」 ポツリ、と朝比奈さんが呟いた。 「まだ、です。まだ出来ることはあります。強制退去コードが執行されるまで、まだもう 少しだけど、時間があるはずです。5分後かもしれないし、次の瞬間かもしれないけど、 まだ諦めちゃだめですっ」 「しかしですね……」 「しかしもカカシもありませんっ! キョンくん、諦めるためにこの時間平面に来たんじ ゃないでしょ? 涼宮さんとまた、会いたいんでしょ? なら、諦めないでください! あたし、イヤなんです。ホントのことがウソになっちゃうなんて、そんなの絶対イヤなん ですっ!」 朝比奈さん……。 あああああーっ、くそっ! 何をやってんだオレは!? 歳とって諦めやすくなっちまっ たか? 朝比奈さんにそんな当たり前のことをいわれなくちゃ行動できないような、マヌ ケな男になっちまってたのか? 情けないにも程がある。 「すいません、朝比奈さん。それに、長門も、古泉も。迷惑かけちまうが、勘弁してくれ!」 オレは走り出していた。普通に考えれば間に合うはずもなく、こんなことしたって無駄 で無意味なのはわかっている。 だからどうした。 無駄で無意味のどこが悪い。オレは感じたままに、感じたことをするだけだ。 立ち止まってたまるか。下を向いてどうする。あいつはいつも、くっだらないことをク ソ真面目に前を向いて、一時も立ち止まらずにやりたいことをやってたじゃないか。 思い出せ。長門が世界を改変させたとき、オレは何を考えた? どういう結論を出した? 忘れるわけがない。身の回りに宇宙人やら未来人、超能力者がふらふらしている世界を 肯定し、受け入れ、傍観者から当事者になることを選んだ。涼宮ハルヒという訳の分から ないヤツを中心に、バカ騒ぎしてやろうと決めたんじゃないか。 それを決めたのはオレだ。もう離さねぇぞ、ハルヒ。おまえが拒んだってな、オレのほ うから食らいついてやる。おまえの我が侭にはイヤってほど付き合ってやったがな、オレ と離れたいなんて我が侭だけは、大却下だっ! 「はっ……がぁっ、くそっ……」 もう汗も噴き出しやしねぇ。口の中はカラカラだ。運動不足がここに来てアダになって やがる。足の筋肉は悲鳴を上げて、目もかすみ、音もよく聞こえない。 見慣れた線路沿いの道までたどり着いた。あとはそこの角を曲がればゴールだ。ここで 立ち止まったら、二度と動けない。そんな気分で角を曲がる。 そこでオレは愕然とした。 道がない。真っ暗な闇が、そこにある。なんだコレは? どういうことだ。 後ろを振り返れば、今まで走ってきていた道が、景色が、光の粒子に姿を変えて消えて いる。角砂糖で作られた町並みが、雨に濡れて溶けていくようだ。 まさかこれが……朝比奈さんの言っていた強制退去コードの発現ってやつか? オレは ……間に合わなかったのか? 「くそっ……」 間に合わなかった。ゲームオーバーだ。コンテニューも復活の呪文もありゃしない。未 来を出し抜こうなんて、オレには過ぎた妄言だったってことか。 「認めるか……認めねぇぞ、こんなこと!」 散々走り回って、喉もカラカラで声なんて出ないと思っていたんだが、それでもオレは 叫んでいた。まだ、オレの体は声を出す気力を残していたらしい。 「ハルヒーっ!」 周囲が闇に包まれる。確かにそこにあるのは、立つことだけを許された儚げな小さい足 場だけ。それすらも、今に消え去ろうとしている。 「待ってろ、必ず会いに行くから!」 違うだろ。そうじゃない。言いたいことは、そんなことじゃない。いい加減にしろよオ レ。二十歳を過ぎて一年も経ついい大人が、言いたいこともわからないのか!? 「ハルヒ、オレは……っ!」 視界が回る。耳鳴りがする。誰かの声が聞こえた……気がする。 誰だ? 誰かそこにいるのか? そこにいるのはおまえか、ハルヒ? 手を伸ばす。その方向で合っているのかどうか、わからなくともオレは手を伸ばした。 目を見開いているはずなのに、何も見えない。闇がこれほど怖いと思ったことはなかった。 伸ばした指先に、何かが触れる。触れたような気がした。必死にそれをたぐり寄せよう ともがくが、感覚がない。自分の体なのに、自分のものじゃないみたいだ。 不安ともどかしさで、気が変になりそうだった。 体全身の感覚がなくなる。上下感覚すら消失する。 そしてオレは──何かを手にしたのか、それとも失ったのか──それを確かめることも なく……意識を暗転させた。 ゴンッ! と、額に携帯電話がダイブしてきた衝撃でオレは目を覚ました。最悪な目覚 めに気分も落ち込むってもんだ。おまけに体全体が筋肉痛で痛むし、どうして自分がアパ ートの自分の部屋で寝ていたのかさえ思い出せない。 ──まいったな…… ご丁寧に、強制的に現代に戻されたかと思ったら、自分のアパートか。旅費が浮いて助 かった、なんて感謝するとでも思ってるんじゃないだろうな? オレはついさっきまであったことを、すべてしっかり覚えている。人を引っ張り回すだ け引っ張り回して、こっちが何もできないのをいいことに、無理矢理元の時間に戻された 恨みを忘れてたまるか。 オレに感謝されたいんだったらな、せめてその記憶もしっかり消してくれ。 「くそっ……」 ここまで自分が無力だと思い知らされた日はなかった。泣くべきか叫ぶべきか、それす らもわからない。眠りを妨げた携帯電話を手にとって、八つ当たり気味に投げ捨てようと 思ったそのとき、ふと画面を見れば、おびただしい量の着信履歴があることに気付く。 履歴は、朝比奈さん6割、古泉3割、長門1割ってとこか。留守電にも、各々コメント が入っていた。いちいち紹介するのも面倒臭い。ざっくばらんに紹介すれば、朝比奈さん は謝罪、古泉は慰め、長門は……相変わらず、何が言いたいのかさっぱりだが、まぁ、慰 めてくれているんだろう。 魂の抜け殻になった体は、各々のコメントをただ適当に聞き流していた。 ため息しか出ない。 どんな慰めや謝罪の言葉をもらったところで、誰に当たり散らせばいいってもんでもな い。この結果になったのはハルヒが望んだからであり、オレの力不足のせいでもある。 遠いな、ハルヒ。 おまえがこんな遠くに感じたのは初めてだ。おまえと離れたこの三年間、そんなことを 微塵も思ったことはないし考えたこともないが、今は無性におまえが遠くに感じる。 「……ん」 三人のメッセージを聞きつつ、頭の中ではハルヒのことを考えていたオレは、おそらく 最後に録音されていたであろうメッセージで、ふと現実に引き戻された。 これまで散々録音されていた三人それぞれの声が、そのメッセージで途切れた。何も喋 ってねぇ。留守録に切り替わると同時に切ってやがる。 イタズラ電話か、間違い電話か。 どっちだっていいさ。用があるヤツなら、メッセージのひとつも入れておくだろう。 携帯を投げ捨て、煙草に手を伸ばし、火を点ける。紫煙を燻らせ、テレビを付けると、 朝のワイドショーがやっていた。丁度朝の八時か。 コメンテイターが「ゴールデンウイークが終わって今日から仕事の人も……」などと、 どうでもいい前振りをしている。 だからどうした。そろそろ将来のことを見据えて仕事選びを始めたオレなんて、毎日が 暇つぶしみたいな……なんだって? 今、なんて言った? オレはテレビにかじり付く。ええい、おっさんのドアップなんぞ映さなくていい。今日 が何日なのか教えろ。って、そうか、携帯を見ればいいのか。 放り投げた携帯を拾い上げて、カレンダーを見る。間違いない、疑念が確信に変わった。 今日は、朝比奈さんの電話でたたき起こされてハルヒが起こした時空改変を修正するた めに過去へ旅立ったその日だ。 それが何を意味するのか? 答えはシンプルだ。けれど、その計算式は複雑極まりない。 答えはわかっているが、その説明ができない。 先に答えを出しておこう。 時間がズレしている。 それしかない。それで間違いないし、それ以外にあり得ない。 本来なら……というか、オレの記憶が正しければ、これから古泉に連れられて田舎に戻 り、長門のマンションから三年前の過去に旅立つはずだ。 しかしそれは、もう過ぎたことになっている。 何故それがわかるのか。 決まっている。朝比奈さんや古泉、長門からの留守録メッセージが、事の終わりを告げ ているからだ。この日、オレの記憶では「今日、過去に行って失敗する」という、その規 定事項はすでにクリアされている。 どういうことだ? 何がどうなっている? すべての出来事が1日ズレていることに… …どんな意味があるんだ? そのことを説明できるのは……あいつしかいない。 オレはすぐに電話をかけた。コールを待つまでもなく、すぐに繋がる。電話の前で待機 してたんじゃないかと思える速さだ。 「すまん長門、オレだ。ちょっと混乱してるんだが……」 『わかっている』 説明が短く済んで助かる。こいつにも、すべてわかっているんだな。それとも、この存 在しない一日をくれたのは、おまえか? 『わたしは何もしていない。今日は、すべての人々にとって当たり前の一日。昨日という 過去が今日という今になった、平穏な日常。あなたにとっても、そう』 当たり前の一日だって? 今のオレにとっちゃ、奇妙で非日常的な一日でしかないぞ。 『違う』 長門はオレの言葉を否定する。 『今日はあなたが知っている平穏な一日。あなたが本来存在する、今の時間。誰にも邪魔 はできない。わたしがさせない。だから──』 長門は同じような言葉を繰り返し、しばし口を閉ざしたかと思うと、最後に一言だけ付 け加えた。 『──待っている』 がちゃり、と通話は切られた。長門から受話器を置いたのだろう。もうそれ以上、話す ことはないと言いたげだ。 ──いや、違うな。話すことがないんじゃない。話せる言葉がないんだ。 あれが長門の精一杯だ。何かしらの制限を受けているのか、それとも適切な言葉が思い 浮かばなかったのか……どちらにしろ、長門はオレに答えを伝えている。 オレが存在する時間。当たり前の日常。そして、存在しないはずの一日。 大丈夫だ、長門。おまえは本当に頼りになるヤツだよ。おまえのメッセージはいつもあ やふやだが、伝えたいことはしっかり伝えてくれることを、オレは知っている。そしてち ょっと考えれば、すぐにわかる答えばかりだったよな。 オレはシャワーを浴びてから身支度を調え、乏しい財布の中身を見てため息を吐いてか ら、外に出る。 今日が昨日から続く当たり前の日常だと言うのなら──行くべき場所は、一カ所しかない。 小春日和の天気とは言え、夜になるとまだまだ寒くなる。筋肉痛プラス新幹線移動のひ どい仕打ちでへばっているオレの体は、ゆるゆると続く路線脇の道を歩くだけでも悲鳴を 上げそうだった。 時折過ぎていく電車は、ドップラー効果を残して消えていく。次第に人気の失せていく 道に、北高のセーラー服姿の似合う朝比奈さんを背負って歩いた思い出が蘇る。 過去を懐かしむことができるのは、大人の特権か。 昔を思い出してため息を吐くなんて、昔は年寄りじみて自分はそうなりたくないと思っ ていたが、逆に今は振り替える思い出があることを誇りに思う。 その誇りも、ただ日々を積み重ねてきただけで培われるものじゃない。自分から前に出 て行動しようと思ったからこそ、作り出すことのできた思い出だ。 「おい」 おまえの思い出だってそうだろ? オレなんかじゃ比べものにならないバイタリティ で、いつもオレの手を引っ張って良くも悪くも行動を起こしてたよな? そこの──鉄格 子をよじ登ろうとしているお姉さん。 「なによっ」 そいつはポニーテールの髪を揺らし、貫くような視線をオレに向けた。 既視感を覚える。 三年か。そういえば前も三年の差があったな。これはあのときの再現なのか……なら、 次に出てくるセリフもわかってる。 「なに、あんた? 変態? 誘拐犯? 怪しいわね」 こういうのも、以心伝心というのかね? 嬉しいと思うべきか、嘆かわしいと感じるべ きか、答えは保留にさせてくれ。 「おまえこそ何をやってるんだ?」 「決まってるじゃない、不法侵入よ」 そう言って、二十歳も超えて立派な成人になったってぇのに、鉄扉の内側に飛び降りて、 閂を固定していた南京錠をはずした。その鍵、まだ持ってたのか。 鉄扉をスライドさせて6年前のように──こいつにしてみれば、もう9年も前の話か──手 招きをして、自分はさっさとグラウンドに歩いていった。 これでオレも不法侵入の共犯者か。 肩をすくめて後に続くと、そいつは満点の星空の下、グラウンドの真ん中で空を見上げ ていた。七夕と違うのは、この空の明るさか。この辺りも都会になったと思っていたが、 東京に比べると星の数が段違いだ。 「ねぇ、宇宙人っていると思う?」 空を見上げたまま、そう聞いてきた。 「いるんじゃねぇの?」 「じゃあ、未来人は?」 「いてもおかしくないな」 「超能力者は?」 「そんなもん、そこいらにゴロゴロしてるさ」 「ふーん」 気のない返事をして、空を見上げていた視線を足下に移す。吹き抜ける風が、束ねた髪 を凪いで駆け抜ける。その表情は、笑顔とはほど遠い。 想起する時間はここまででいいだろ? 「悪かったよ」 オレはその姿に謝罪した。 これでも急いで来たつもりなんだ。あっちこっち寄り道して、長門からヒントをもらって、よ うやく今日のこの日、この瞬間にたどり着くことができた。 オレにとっての日常。当たり前の平穏。それは、宇宙人や未来人、超能力者と訳の分か らん事態に巻き込まれて、その中心にいる唯我独尊の団長さまを心配する一日。 そして、ズレた今日が過去になった今という現実。存在しない一日という奇跡を残して おいてくれたのは──おまえだよな、涼宮ハルヒ。 ようやく、おまえを見つけることができたよ。 「三年も待たせて、悪かった」 「まったくね。ま、あんたの遅刻癖はいつものことだけどさ」 怒るでも呆れるでもなく、ハルヒはそう言った。どこか遠くを見ているような、けれど その目はオレを見ているのではなく、違う何かを見ている。 「この三年間、どうだった?」 「別に。どーってことない毎日だったわ。そこそこ楽しくて、まぁまぁつまんなくて…… そういうあんたはどうなのよ」 「あり得ないことが連続の、非日常だったよ」 それは揶揄でも誇張でもない、事実あり得ない日々の連続だったさ。毎日決まった時間 に目を覚まして大学に通い、その後バイトに行って疲れて帰ってきて寝る。 あり得ないだろ? 高校時代のオレの日常からは、かけ離れた生活じゃないか。近くに 宇宙人も未来人も超能力者も──ハルヒすらいない日々なんだぜ。 そんな世間一般の平凡な生活を送るハメになったのも、おまえがオレを見捨てようとし たからなんだ。分かってるのかよ? 「なんでオレたちから離れようと思ったんだ?」 「……別にそんなこと、思ってない」 はぁ~っ、とオレはため息を吐く。 そうだな、おまえはオレたちから離れようなんて微塵も思っちゃいなかっただろうよ。 ただ、今のはオレの聞き方が悪かっただけだな。訂正しよう。 「なんでオレから離れようと思った」 オレはそこまで鈍感じゃないんだ。おまえは確かに長門や朝比奈さん、古泉と離れたい とは思っていなかっただろうが、オレとはどうだ? 距離を置こうとしてたじゃないか。 そりゃないぜハルヒ。オレを巻き込んだのはおまえの方だってのに、なのに見捨てるな んて酷すぎるじゃないか。 「あたしが……あたしであるために……かな?」 ハルヒは淡々とそう告げた。 意味わかんねぇよ。おまえはいつもおまえで、そのままだったじゃないか。オレが側に いてもいなくても涼宮ハルヒだったじゃないか。だったら、オレが側にいることを許して くれてもいいじゃないか。 「違うわよ。あたしは、あんたがいたから『あたし』だったの」 そう断言した。断言してから、一瞬迷うように視線を泳がせて、言葉を続ける。 「中学の時はずっと一人で好き放題やってて、周りから孤立してた。高校でも、そうだと 思った。けど、あんたがいてくれた。あんたは嫌々だったかもしれないけど、それでも引 っ張るあたしに『やれやれ』って顔しながら、それでも着いてきてくれて……それが嬉し かった。あんたがいたから、あたしは一人じゃないって思えたし、笑っていることもでき た。でも」 ハルヒは、心の中の澱んだものを一緒に吐き出すかのように吐息を漏らした。 「もし、あんたがいなかったらあたしはどうなってたと思う?」 貫くようなハルヒの視線。その視線には、何の感情も込められていなかった。喜びも悲 しみも、怒りも哀れみもない。いや、もしかするとすべての感情がごちゃ混ぜになってい るからこそ、オレにはわからなかっただけかもしれない。 「そして気づいちゃった。あんたがあたしを守ってくれて、笑うことを許してくれて、支 えてくれてたんだって。そんなあんたがいなくなたら……あたしはどうなるの? あたし を生かしてくれていたあんたがいなくなったら……あたしはあたしじゃなくなるの? そ んなことないって思った。思いたかった。だから」 それが、オレから離れた理由? それを本気で言ってるのか、ハルヒ。おまえはそれで いいかもしれないが、ならオレの気持ちはどうなる? 自分勝手も過ぎるってもんじゃないか。 「あたしが何も知らないとでも思ってんの? あんた、いっつも額にしわ寄せてさ、すっ ごく大変で困ったこと抱えてますって顔してたじゃない」 オレ、そんな顔してたのか。確かに毎日そんな気分だったが、自分じゃまったく気づい てなかった。そうだな、ハルヒは勘の鋭いヤツだから、気づかれていてもおかしくはない。 「あたし、あんたの力になりたかった。あたしに何かできることがあるのかわからないけ ど、それでも力になりたかった。なのにあんた、何も話してくれなかったじゃない。手を 差し伸べることさえ許してくれなかった」 「それは……違う。オレは、」 「あんたが抱え込んでた不安って、あたしのことなんでしょ?」 オレは、何も言えなかった。オレが抱え込んでいた懸案事項は、確かにハルヒのこと。 それが間違っていないからこそ、何も言えなかった。 「あたし、あんたの重荷になんてなりたくない」 揺るがない意思。挑むような言葉。こいつの頑固さは今に始まったことじゃないし、思 い込みの激しさも並じゃない。一度口にした言葉が覆ることもない。 それが真実の言葉なら。 「ウソはやめろ」 今の言葉のすべてがウソだとは言わない。ハルヒの偽らざる本心であることもわかって いる。けれど、その土台となる思いがウソなら、それは見かけ倒しの本心だ。根本にある 思いを偽っている限り、オレが簡単に騙されると思うな。 こいつは三年前の高校卒業のときに、オレに本心を見せていた。告白したことや、キス してきたことじゃない。すべて吹っ切ったように見せた笑顔でもない。 最後の言葉だ。 あれが、おまえの偽らざる本心じゃないか。 「覚えているか? おまえ、オレに『じゃあね』って言ったんだ。『さよなら』じゃなく て『じゃあね』って。何もかも吹っ切ったように見せて、告白してキスまでして、それで も最後の最後でおまえは『さよなら』が言えなかったんだ」 だから、今がある。この日、この場所で出会うことができた。 「ハルヒ」 オレはハルヒの手を取って、抱き寄せた。 いつもこいつの方から手を差し伸べていたけれど、オレはいつも振り払っていたのかな。 悪かったよ、そんなつもりはなかったんだ。それでも今日だけは、今だけは、オレの方か ら差し伸べる手を振り払わないでくれ。 「おまえ、卒業のときに『オレの気持ちなんてどうでもいい』とか言ってたな。ひどいじ ゃないか。自分だけ言いたいこと言って、オレには何も言わせてくれないのか」 「……なによ」 「オレは、おまえと離れたいなんて考えたことは一度もない」 「…………」 そうさ。オレはそんなことを本気で考えたことなんて、一度もないんだ。 間違えるな。ハルヒに辛い思いをさせていたのはオレなんだ。意識的にしろ、無意識的 にしろ、傷つけていたのはオレのほうだ。 そして、それを気づかせてくれたのもハルヒだ。 それも忘れるな。ハルヒがオレと出会って変わったって言うのなら、オレもハルヒのお かげで変わることができた。おまえが隣にいることが、オレにとっての日常であたりまえ なんだ。もうこれ以上、無意味でつまらん非日常なんて送りたくはない。 だから、言わせてくれ。 「おまえが好きだ」 「……そんなの……とっくにわかってたわよ、このバカっ!」 絞り出すような声。微かに肩が震える。それでもコイツのことだ、泣いちゃいないだろ う。泣きじゃくるハルヒなんて、想像もできやしない。 「そうか、わかってたか」 今更だが──オレにも三年って時間が必要だったんだよ。そのくらい、察してくれ。 「三年じゃないわ」 ハルヒはそう言うと、ポケットから色あせた便せんを取り出した。ああ、すっかり忘れてた。 「あたしにとっては、中学から今日までの、九年越しの思いよ」 「そりゃまた……気の長い話だな」 「待たせたのはあんたでしょ」 「いや待て。それはジョン・スミスだろ? オレじゃない」 「あんたがジョン・スミスでしょ?」 「いや……まあ」 「それとも、キョンって呼ぶべき?」 こいつの意地の悪さは承知しているが、ここまでとは想定外だ。 「こんな時くらい、ちゃんと本名で呼んでくれ」 「本名……ねぇ」 ハルヒは──本当に久しぶりに──白鳥座α星の輝きのごとき笑顔を浮かべ、底意地が 悪く口元を釣り上げてから「あんたの本名なんて忘れちゃったわ」と言って……オレの反 論なんぞ受け付けないとばかりに唇を重ねてきた。 それは冗談だよな? まさか本当にオレの本名を忘れてるわけじゃないよな? もし忘 れてるってんなら……まぁ、いいか。 それでごまかされるのがオレらしい役どころだろ。 エ ピ ロ ー グ 後日談を語るほど、まだ日は経っていない。語るべきことは何もなく、あとは口を閉ざ すべきかもしれないが、一言だけ付け加えるのが筋というものか。 あの存在しない一日が朝比奈さんが言うところの「オレとハルヒが入籍する日」らしい が、だからと言って勢い余って役所に駆け込むほど、オレもハルヒもテンションは高くな い。いやまぁ、ハルヒはそんな気満々っぽかったが、オレは東京で大学に通い、ハルヒは 地元の大学で考古学の勉強に精を出しているわけだし、距離は相変わらず離れているが、 それも大学を卒業するまでの話だから、ということで引き留めた。卒業したら……さて、 どうなるのかね? 朝比奈さんの真似をして「禁則事項」とでも言っておこうか。 そんな朝比奈さんは、この間の一件のせいもあってか、もっと立場が上の人間になろう と努力しているようだ。あなたなら成りたい人になれますよ。 厄介なのは古泉だな。事の顛末を知ったあいつは、肩をすくめて「まだ僕の副業は続き そうですね」などとほざいた。何がどう続くのか問いつめたいところだが、ま、その笑み が作り物っぽくなかったから許してやるが。 事が終わって一番苦労しているのは長門かもしれない。なにしろあいつはハルヒと同じ 大学だ。この前、電話で報告したときなんぞ「知ってる」とすでに把握済みの上に「涼宮 ハルヒに聞いた」と続け、最後に──これはオレの気のせいかも知れないが──ため息を 吐いたような気がした。 それがオレの気のせいならいいが……ハルヒ、おまえはオレがいないところで長門に何 を吹き込んだんだ。一万五千四百九十八回くらい同じ夏を繰り返してようやく、つまらな さそうにする長門に、ごく普通の日常会話で呆れを感じさせる話をしつこいくらい繰り返 したのか? ……考えるのはやめておこう。むしろこれから考えるのは、東京に遊びにくるハルヒを 迎えに行ったその後だ。今回ばかりは遅刻するわけにもいかない。 携帯を手に取り、メールを確認すると「到着10分前には待ってること。遅れたら罰金 だからね!」と着信があった。 わかってるよ。散々待たせたんだからな、今回ばかりは遅れるわけにはいかない。 遅れるといえば、何故ハルヒが五月のゴールデンウィーク明けまで待っていてくれたの か後になって分かった。 過去においてオレが、というかジョン・スミス名義で投げ込んだ手紙は、高校卒業の三 月のこと。それから二ヶ月も過ぎていたのに、あいつは存在しない一日を作ってまでオレ を待っていたのには、ちゃんと理由があるんだが……その理由が意味不明だな。 ジョン・スミスと会った七夕でも、高校を卒業してオレと決別しようとした日でもなく、 あいつが選んだその日が──オレと普通に会話を始めた日だなんて、わかるわけないだろ。 さて、そろそろハルヒがやってくる。驚いたことに、あいつのほうから宇宙人や未来人、 超能力者についてオレを問い質したりしてこないんだが……話をしてやるべきかな? そ れとも、あいつが持ち込む厄介事に巻き込まれることを懸念するべきか。 ま、どっちでもいいさ。 それが、オレが散々苦労して取り戻したごく当たり前の日常や──ハルヒの笑顔につな がるならね。 〆
https://w.atwiki.jp/live2ch/pages/273.html
トップ ライブ配信カテゴリ概要 ゲーム配信のやり方 ニコ生コメントビューア / 2019年03月25日 (月) 23時39分52秒 コメビューの定番!あの配信者も使っているかも? ニコ生コメントビューア(以下NCV)とは、ニコニコ生放送で書き込まれたコメントを閲覧するさいに使うアプリ(コメントビューア)です。コメントビューアを使わなくてもコメントを閲覧できるのですが、使用するとさまざまなメリットがあります。 目次 コメントビューアとは ダウンロード クッキー取得先の選択 NCVの簡単な使い方 生IDコメントと184コメント両者の相違 NCVによる設定 NGワードの設定 NGユーザーの設定 NG共有機能 特定のユーザーの発言に注目する背景色の変更 名前(ニックネーム)をつける コテハンの自動登録 個別ユーザー設定の削除 特定ユーザーによるコメントの一覧表示 最初の発言を強調表示する そのほかコメント表示の詳細全コメントの取得 URLを開く 追い出しの発生 コメントの書き込みコメント投稿 投稿オプション コメントの書き込み(配信者専用)運営コメント 配信用ツール コメントの読みあげ コメントログの保存 その他 関連ページ コメントビューアとは コメントビューアを使ういちばんのメリットは、だれがどのようなコメントを書き込んだか判別できるという点でしょう。たとえば、おもしろいコメントを書き込んでいる人がその放送でどのようなコメントをしているのかわかります。また場合によっては、自分の親しい人や有名な生放送主によるコメントだとわかることもあります。 ほかにも音声合成によるコメントの読みあげなど、最近のコメントビューアにはコメントを閲覧するうえで便利な機能がたくさん詰まっています。コメントビューアとして必要と思われる機能はほぼすべて盛り込まれおり、初心者も迷うことなく使いこなせることでしょう。 なお、コメントビューアとしては、やります!アンコちゃんというものもあります。アンコちゃんは多機能さが特長のコメントビューアです。好きなほうを使ってください。 やります!アンコちゃん ▲画面の上へ ダウンロード NCVのダウンロードは、以下のとおりです。 公式サイトにアクセスする。 左メニューの「ダウンロード」にある「a○○○(インストーラー版)」をクリックする。 「ダウンロード」をクリックする。 「NCV_Setup_xxx.exe」をダウンロードしたら、ダブルクリックする。 NCVを起動できない場合は、.NET Framework 4.0をインストールしてください。 NCVの開発者(moro氏)のコミュニティは、プログラムの勉強をする(co13528)です。NCVを使用していてわからないことがある場合、掲示板で具体的に質問をすればmoro氏が解決策を示してくれるかもしれません。 ▲画面の上へ クッキー取得先の選択 NCV初回起動時は、「ブラウザのクッキーを取得する」というタイトルのウィンドウが表示されます(*1)。「ブラウザのクッキーを取得」のなかから、ニコニコ生放送にアクセスするさいに使用しているWebブラウザを選択しましょう。そして「OK」をクリックします。 ▲使用しているWebブラウザを選択します。ここでの設定は、次回以降は基本的に行う必要はありません。 ▲画面の上へ NCVの簡単な使い方 クッキー取得先の選択ができたら、つぎは個別の放送にアクセスしてNCVを使用してみましょう。わからない用語があるときは読み飛ばしてください。詳細は後述します。 生放送への接続は、WebブラウザのファビコンをNCVにドラッグ&ドロップすることで可能です。また、ニコニコ生放送のマイページなどに表示されているコミュティのサムネイルをNCVにドラッグ&ドロップすることでも接続可能です。 NCVにコメントが表示されます。 特定の人によるコメントの背景色を変更するには、任意のコメントをダブルクリックします。 ▲背景色を変更したところ 生IDによるコメントの場合は、NCVのをクリックすることで名前(ユーザー名)を取得できます。 「@太郎」というように「@名前」というコメントがあった場合、この名前を固定ハンドル(コテハン)としてNCVに自動登録する機能もあります。NCVのオプションボタンをクリックして、「一般設定」タブで「@コテハンを自動登録する」をONにします。 アリーナまたは立ち見といった、ほかの部屋のコメントを閲覧したい場合は、オプションボタンをクリックして「一般設定」タブを開き、「全部屋のコメントを同時表示する」のチェックを入れます。 コメントを音声合成によって読みあげたい場合は、棒読みちゃんをご覧ください。 ▲棒読みちゃん 各列を左右にドラッグすると、項目を入れ替えることができます。また、非表示にしたい項目がある場合は、項目上で右クリックして表示 / 非表示を切り替えてください。 ▲画面の上へ 生IDコメントと184コメント 両者の相違 NCVなどのコメントビューアを使う大きな理由のひとつに、その放送でだれがどのようなコメントをしたのか知ることができるから、ということがあげられます。そこで、生IDによるコメントと184コメントの違いについて理解しておきましょう。私たちニコニコ動画 / 生放送の利用者は、最初にアカウントを作成しています。そのさいアカウント作成者全員にユーザーIDが割り当てられています。ふだん私たちはユーザーIDを意識しませんが、コメントを書き込むときはIDも付随して記録されています。 ユーザーIDは数字のみで構成されており、マイページのトップで確認することができます。この数字のみで構成されたIDのことを生IDといいます。暗号化されていない裸のIDなので、「生」IDとよぶわけです。生IDでコメントすればその人がだれなのかということが他人にわかります。これが生IDによるコメントです。 しかし、匿名でコメントしたいという人も多いでしょう。そこで、生IDを暗号化してコメントすることもできます。このことを184(イヤヨ)コメントとよびます。初期設定では184コメントするようになっているため、設定を変更しなければ生IDが他人に知られることはありません。暗号化されたIDは、毎週木曜日の午前9時をもって別の暗号化されたIDに変更されます。 ▲NCVを使用していない場合、「設定」タブで「匿名(184)コメントで投稿する」をONにしておけば184コメントになります。同項目をOFFにすることを「184を外す」といいます。 NCVによる設定 NCVでコメントを取得したら、「ユーザーID」を見てください。もし数字のみが並んでいるIDがあれば、生IDで書き込まれたコメントということです。この場合、NCVのをクリックしてしばらく待つと、生IDでコメントした人の名前(ニックネーム)が表示されます(*2)。 ▲274番と278番以外が生IDによるコメントであるため、ユーザー名を取得できます。 をクリックせずとも、ユーザーネームの取得を自動で行うこともできます。NCVのオプションボタンをクリックし、「一般設定」タブで「生IDコメントのユーザー名を自動取得する」をONにしておきましょう。 また、生IDによるコメントの場合は、その人のプロフィールページを開くことができます。ユーザーIDを右クリックし、「ユーザーページを開く」を選択します。 ▲画面の上へ NGワードの設定 投稿されたコメントのなかには、個人的に目にしたくない表現を見かけることがあるでしょう。このようなコメントはNGワードに設定すれば「コメント一覧」タブに表示されません。コメント番号が飛びます。NGワードの設定は以下のとおりです。 NGワードにしたい表現を含むコメント行で右クリックして「NGコメントに追加」を選択する。 「NGコメント」タブが表示されるので、NGワードにしたい表現が表示されていることを確認する(*3)。 必要に応じて表現を修正し、「追加」ボタンをクリックする。 「コミュ依存」をONにしておくと現在接続中の放送を行っているコミュニティのみに適用される(*4)。 NGワードの削除は、右クリックして「削除」を選択して行ないます。複数のNGワードをまとめて削除したいときは、「Ctrl」キーまたは「Shift」キーを押しながらワードをクリックしてください。 NGワードで覚えておきたいのは、運営側で設定しているNGワード(運営NGワード)があるということです。運営NGワードはNCVを使っていても表示されません。かりに運営NGワードを含むコメントが投稿された場合、「コメント一覧」タブには「※ NGコメントです ※」と表示されます。運営NGワードを見ることができないのはニコニコ生放送の仕様変更によるものです。 ▲画面の上へ NGユーザーの設定 不快な発言をする人がいる場合、NGユーザーに設定することもできます。NGユーザーにしてしまえば、その人の発言は「コメント一覧」タブに表示されず、コメント番号が飛びます。NGユーザーにしたい人が投稿したコメント行で右クリックし、「NGユーザーに追加」を選択してください。 NGユーザーを解除したい場合は、「NGユーザー」タブを開きます。そして特定のユーザーID上で右クリックし、「削除」を選択します。複数のNGユーザーをまとめて解除したいときは、「Ctrl」キーまたは「Shift」キーを押しながらユーザーIDをクリックしてください。 ここで注意しておきたいのは、184コメントの場合はユーザーIDが暗号化されているため、NGユーザーに設定しても毎週木曜日にリセットされてしまうということです。つまり、184コメントをしている人をNGユーザーにしたとしても、その設定が有効なのは最大で1週間となります。 ▲画面の上へ NG共有機能 NCVはNG共有機能に対応しています。NG共有機能とは、不快と思われる可能性が高いコメントを自動で非表示にする機能です。同機能では、すべてのニコニコ生放送ユーザーとNG設定が共有されるため、自分でわざわざNG設定をする必要がありません。多くのユーザーが不快と考えるコメント、または特定のユーザーのコメントを、表示されないように設定できるわけです。 「表示」→「NG共有機能を使用しない」にチェックが入った状態の場合は、NGワード以外のすべてのコメントが表示されます。「ユーザーID」列の先頭には、緑・黄緑・黄・橙・赤色のいずれの色がついています。緑色は問題のないコメントで、黄緑→黄→橙→赤の順に問題のあるコメントである可能性が高くなります。 「NG共有 弱」を選択すると、赤色のついているコメントが非表示になります。「NG共有 中」を選択すると、橙色のついているコメントが非表示になります。「NG共有 強」を選択すると、黄色のついているコメントが非表示になります。よくわからなければ、「NG共有 中」を選択しておけばよいでしょう。 ▲画面の上へ 特定のユーザーの発言に注目する 背景色の変更 特定のユーザーのコメントをほかのコメントと区別して、目立たせることができます。まず背景色を変更する方法から見てみましょう。背景色を変更するには、コメント行でダブルクリックします(*5)。すると背景色がランダムで登録されます。ダブルクリックするたびに背景色が別の色に変化します。 ランダムに背景色を変更するのではなく自分の好きな色に背景色を変更するには、コメント行で右クリックして「このユーザーの個別設定を追加 / 編集する」を選択します。そして「背景色」をクリックして色を選びましょう。 名前(ニックネーム)をつける また、特定のユーザーに名前をつけることもできます。背景色を変更するときと同様、コメント行で右クリックして「このユーザーの個別設定を追加 / 編集する」を選択し、「ニックネーム」に適当な名前を入力してください。ただし、上で述べたとおり184コメントの場合はユーザーIDが暗号化されており、このIDは1週間ごとにリセットされます。そのため、暗号化されたユーザーIDに名前をつけても最大で1週間しか意味をなしません。 コテハンの自動登録 NCVには固定ハンドル(コテハン)の自動登録機能があります。たとえば、視聴者が「@太郎」とコメントしたとしましょう。このとき同機能を使用していれば、太郎をコテハンとして自動で登録できるわけです。コテハンの自動登録機能を使うには、NCVのオプションボタンをクリックして「一般設定」タブで「@コテハンを自動登録する」をONにします。 「指定ユーザーIDがすでに登録されている場合に上書き登録する」をONにしておくと、コメントに「@名前」と書き込まれたときにその名前をコテハンとして登録しなおします(*6)。 個別ユーザー設定の削除 背景色やニックネームの設定を削除したい場合は、コメント行で右クリックして「このユーザーの個別設定を削除」を選択してください。また、「ファイル」→「ユーザー設定一覧」でユーザー設定を確認することができます。 特定ユーザーによるコメントの一覧表示 特定のユーザーのコメントのみを一覧表示するにはユーザーIDをクリックします。すると当該ユーザーIDによる発言をまとめて表示します。 最初の発言を強調表示する 初期設定では、視聴者が最初に書きこんだコメントは太字で強調して表示されます。これをやめたい場合は、オプションボタンをクリックして「コメント表示設定」タブの「受信済みコメントの範囲で各ユーザー最初の発言を強調表示する」をOFFにしてください。 ▲画面の上へ そのほかコメント表示の詳細 全コメントの取得 生放送に接続した時点でコメントが1,000個以上ある場合、すべてのコメントが取得・表示されるわけではありません。しかし、NCVのをクリックすればコメントを1,000個さかのぼって取得・表示できます。全コメントを取得できるまで何回か同アイコンをクリックしてください。 URLを開く URLを含むコメント上で右クリックして「URLを開く」を選択すると、URLのリンク先が開きます。 追い出しの発生 人気放送の場合、「コメント一覧」タブに「/hb ifseetno 座席番号」と表示されることがあります。これは、一般会員を追い出してプレミアム会員が入室したことを意味しています(追い出しコマンド)。追い出しコマンドを表示したくない場合は、以下のように設定しましょう。 「表示」をクリックする。 「追い出しコマンドを表示する」のチェックを外す。 ▲画面の上へ コメントの書き込み コメント投稿 NCVからもコメントを書き込むことができます。NCVの下のほうにテキストボックスがあるので、コメントを入力して「書き込み」ボタンをクリックしましょう。「書き込み」ボタンの代わりに「Enter」キーを押してもかまいません。自分の書き込みには「あなたです!」と表示され、背景に色がつきます(*7)。 投稿オプション 自分が書き込むコメントの表示位置・大きさ・色を変更できます。一般会員かプレミアム会員かによって、プルダウンで選択できる種類は異なります。「184」は184コメントにするかどうかの設定です。 ▲投稿オプション 184コメントの設定は、コミュニティごとに登録しておくことができます。これにより、あるコミュニティでは184コメントし、別のコミュニティでは生IDでコメントするというような設定を事前にすることが可能となります。NCVのオプションボタンをクリックして「コメント書き込み設定」タブの「184設定をコミュごとに行う」をクリックしましょう。 ▲この画面で「現在接続中のコミュニティを登録する」をクリックし、「匿名」のON / OFFを切り替えます。ここで「匿名」をOFFにしておけば生IDによるコメントになります。 ▲画面の上へ コメントの書き込み(配信者専用) 配信者が自分の放送にNCVで接続すると、通常とは異なるオプション項目が表示されます。 運営コメント 運営コメントをしたい場合は、「運営」にチェックを入れてコメントを書き込んでください。運営コメントをしたさいに名前を表示したい場合は、NCVのオプションボタンをクリックして「コメント書き込み設定」タブで「運営コメントを名前付きで投稿する(配信者のみ)」をONにします。ここで入力した名前が運営コメントで表示されます。 運営コメントを表示したままにしておきたい場合は、「/perm」にチェックを入れた状態にしておいてください。チェックを外した状態だと、一定時間経過後に運営コメントは消えます。 なお、2017年6月現在、「新配信」の場合は「運営」にチェックを入れた状態ではNCVからコメントできません。 配信用ツール ニコニコ動画内にある動画を再生して視聴者に見せたい場合や、アンケートを行いたい場合、配信用ツールから行うことができます。 ▲画面の上へ コメントの読みあげ 音声合成によりコメントを読みあげることができます。コメントを直接見ることができない場合にこの機能を使うとよいでしょう。コメントを読みあげるためには、SofTalkまたは棒読みちゃんというアプリが必要です。以下、棒読みちゃんの使い方を簡単に見ていきます。 ▲棒読みちゃん 公式サイトからのリンク先で「BouyomiChan.zip」をダウンロードします。このファイルを解凍すると「BouyomiChan」フォルダが生成されます。同フォルダをCドライブ直下など適当な場所に移動します(*8)。 NCVのオプションボタンをクリックします。 「読み上げ設定」タブを開きます。 「コメント読み上げを使用する」をONにし、「棒読みちゃん」を選択します。 「参照」をクリックし、「BouyomiChan」フォルダを移動した場所にある「BouyomiChan.exe」を選択しましょう。 最後に「OK」をクリックします。棒読みちゃんの詳しい使い方については、以下のページをご覧ください。 棒読みちゃん ▲画面の上へ コメントログの保存 コメントログをテキスト形式で保存するには、「ファイル」→「テキスト形式で保存」の順にクリックします。保存したコメントログはメモ帳で見ることができます。 また、コメントログをXML形式で保存したい場合は、「ファイル」→「名前をつけて保存」の順にクリックします。この場合、保存したXMLファイルをNCVにドラッグ&ドロップすることでコメントログを見ることができます。 オプションボタンをクリックして、「一般設定」タブで「コメントログを自動保存する」をONにしておくと、放送切断時やアプリケーション終了時などにコメントログを自動で保存します(XML形式)。 ▲画面の上へ その他 コメントが書き込まれた時刻を表示したい場合は、画面右上にあるオプションボタンをクリックして「コメント表示設定」タブで、「コメント書き込み時刻表示方法」を「書き込み時刻」にします。 初期設定では、NCVの画面が最前面になるように設定されています。この設定をやめたい場合は、「表示」→「常に手前に表示」の順にクリックしてください。 毎週木曜日の午前9 00~11 00はニコニコ生放送のメンテナンスが行われます。メンテナンスによって仕様が変更されることがあり、その結果NCVの一部の機能が動作しなくなることがあるかもしれません。 ▲画面の上へ 関連ページ コメント質問など ニコニコ生放送意外と単純!ニコ生のやり方、必要なものはこれ 棒読みちゃんゆっくりボイスでコメントを読ませよう!棒読みちゃんの使い方 Flashコメントジェネレーター見た目で差をつける!コメントをニョキニョキ表示するソフト ▲画面の上へ